では僕は、『ゲバルト時代』という本を紹介しましょうか
こんにちは。あかごひねひねです。
タイトルからしてヤバめの本を紹介します。
『ゲバルト時代』
ゲバルトってのはドイツ語で「暴力」って意味で、「ゲバ棒」とか「内ゲバ」の語源です。
この本は、昔、新左翼の暴力学生をやってたおっちゃん(むしろおじいちゃんか)の回顧録なのです。
友人の青木白くんが『絶歌』の対抗馬みたいな感じで被害者遺族の人の書いた本を紹介してまして、おまけにそれが結構見られているようで。
それなのに僕が紹介するこっちはむしろ加害者(殺してないけど)の回顧録です。数日前から紹介しようと記事を書いてたんですが、いやーまいった。やばい。怒られちゃう。
いちおう言い訳しとくと、僕は彼と違って読書とリスペクトがあんまり一致しないんです。
だからこんな本を紹介してますが別に広い海を見たような感動をしたり、作者の想像力に震えたりはしてません。
僕が暴力学生というわけでもありません(当たり前)。単純に面白かっただけです。軽い気持ちです。
恵文社一乗寺店にて購入
京都に「恵文社 一乗寺店」っていういい感じの本屋がありまして、芸大の近くなんでアート系サブカル系の本がたくさんあるんですが、この本は何年か前にそこで買いました。
ちなみに、その時に一緒に買った本がもう一冊あるんですが、それは『カルト・陰謀・秘密結社大辞典』です。
当時の僕の精神状態や、こじらせ具合、察して下さい。あ、でもこっちも面白い本ですよ。
「お前がもうけた金は党のものだ。共有物なんだ」
話を戻します。この本、回顧録といっても「昔の俺は凄かったんだ」的な自慢話じゃないんです。
よく知らない女とアジトで雑魚寝たらムラムラしてセックスしちゃうとか、金が無くて雑誌にちょっとだけ組織の情報流してるとか、出てくるつながりが「高校の同級生」だったりとか、ものすごく人間くさい、そしてどう考えてもこの人下っ端。下っ端の左翼学生の回顧録なんです。
だいたい、途中で運動から逃げ出します。てか本の中に自分で「ヘタレ」って書いてます。
僕らの世代は新左翼の学生運動っていうと、本当に知識でしか知りませんけど、これを読むと、その時代のリアルがなんとなく伝わってくる気がするんです。
こう言っちゃなんですが、どこか呑気なんですよね。殴り合いをしても、火炎瓶を投げても、どこか呑気。もちろん文体もあるんでしょうが、悲壮感の無さ、と言いましょうか。
とにかく、これ読むと今まで見たことない世界が見えます。それは異常なんだけど、どこか共感も出来る世界です。
僕が好きな箇所は、筆者が赤軍派から逃げ出すきっかけになった、稼いだ金を組織の上役に取り上げられそうになるシーン。
筆者は浪人中の高校の同級生の身代わり受験をして、数万円のお金を手にするんですが、それが当時所属していた赤軍派の中堅幹部、「滋賀大の物江」にバレて呼び出されてしまいます。
そこで物江に
「聞くところによると、お前は何万もの金を私物化しているそうじゃないか。余分な金があれば党に上納するのは鉄則だろう!」
と、詰問され、筆者がのらりくらり逃げていると続いて物江は
「共産主義では私有財産政を否定するんだ。お前はイスクラとして指令通りに活動すればいいんだ。党で活動している以上、お前の全ての活動は党の活動であるし、その中でお前が儲けた金は党のものだ。共有物なんだ」
と言ってきます。このセリフに僕はやられましたね。
どう考えたって、金を徴収したいがための屁理屈。
左翼学生は屁理屈と共産主義を絡めてくるんだ!と、新発見に思わず笑みがこぼれました。
まあ、そんな本です。
興味が無い人は全然でしょうが、少しでも興味がわいた人なら楽しめると思います。あと、作中やたらと当時の左翼用語が出てくるので、読み終わる頃にはけっこう覚えて使えるようになってます。
「新入生をオルグしにいく」とか、まだ使ってるとこあるのかな。
とまあ、そんな本です。かなり、オススメ。好きな本です、それでは、また。