あかさか対談「桃太郎を深読みする」2
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あか:あかごひねひね
さか:さかごくる
あか「鬼がいったい何者なのか、という疑問は少し置いておくとして、旅立つ桃太郎におばあさんが作ってくれたのがきびだんご、おじいさんが渡したのが「日本一」と書いたのぼりだったよね?」
さか「そうだね」
あか「ここも引っかかるポイントだ」
さか「どこが?美しい家族愛じゃない?」
あか「まず、既に分かっている情報として、桃太郎の持っていたきびだんごは、かなり独特のにおいを放っていたと考えられる」
さか「なんで?」
あか「この後、犬・猿・キジが相次いで『お腰につけたきびだんご』をねだりに現れるからだよ。袋に入れて腰につけていても、中身が分かるほどのにおい、しかも動物をおびき寄せるにおいを発していたことが分かる」
さか「いやいや、動物だから嗅覚が鋭くて、中身がきびだんごだって分かっただけじゃないの?」
あか「百歩ゆずって犬と猿はそうだとしても、鳥類は一般的に嗅覚が鋭くないと言われてるんだ。しかもキジはおそらく上空を飛んでいたはず。それでも分かるほどのにおいとなると、これはかなり強いと思わざるを得ないでしょ」
さか「うーん、そういわれると、確かに」
あか「そして、おじいさんの作ったのぼり。『日本一』と書いたやつ。君は、『日本一』と書いたのぼりを持った人間が、いきなり目の前に現れたら、どういう反応をする?」
さか「リアルで会ったら避けると思うけど」
あか「その通り。『鬼退治』とか書いてれば、何者か分かるけど、『日本一』では伝わらない。ロードレーサーが『日本縦断挑戦中』ってタスキをかけてたら『頑張れ』って思うけど、『何者にも負けない強靭な肉体』とか書いてあってもわけ分からないでしょ?」
さか「例が独特だけど言いたいことは分かる」
あか「で、しかもそんな桃太郎の腰にくくりつけた袋からは、得体の知れないにおいが立ちこめ、おそらくそのにおいにつられた近所の野良猫野良犬の行列が彼の後ろには出来ていて、おまけに本人の横には野犬と野生猿と野鳥がぴったりくっついている。完全にヤバい見た目だと思う」
さか「確かに。子供が一斉に逃げるレベルかも」
あか「全てはおじいさんとおばあさんが桃太郎に持たせた物のせいでしょ。俺はここに、老夫婦の隠された意図を感じる」
さか「意図?」
あか「考えてもみなよ。どんなにおじいさんとおばあさんが可愛がろうと、すくすくと優しい子に育とうと、彼は核実験施設の放射能によって桃から生まれたミュータントであることは紛れもない事実なんだよ。しかも、彼は放射線の中で生まれ、放射線の中で育ってきた。彼自身が、放射能を持っている可能性もゼロじゃない。おじいさんとおばあさんはそれを考えたんじゃないか?出来るだけ、行く先々の人間が彼に近寄らないよう、目立つのぼりを持たせ、野生動物を引き寄せる異臭を放つきびだんごを持たせた。きびだんごの方はもしかすると、人が近寄ってはいけない分、たくさんの動物に囲まれれば寂しさが紛れるだろうという配慮もあったかもしれない。そして実際、その通りになったわけだし」
さか「彼についぞ人間の仲間は出来ず、犬と猿とキジが最後までの仲間となったわけか」
あか「そういうこと。そして、このことは我々にさらなる疑問を抱かせる」
さか「ほう」
あか「なぜ、桃太郎は鬼退治に行きたいと言い出したのか。なぜ、おじいさんとおばあさんは、それを許したのか。そして、さっき後回しにした謎。そもそも鬼とはいったい何者なのか」
さか「(ゴクリ……)」
あか「全て謎は、つながっているんだよ」
(つづく)