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飄々舎

京都で活動する創作集団・飄々舎のブログです。記事や作品を発表し、オススメの本、テレビ、舞台なども紹介していきます。メンバーはあかごひねひね、鯖ゼリー、玉木青、ひつじのあゆみ。

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ゆゆしい音色19:種明かし【同人小説】

「父親を逮捕 川原で発見された女子大生遺体。−T県警

 

 27日午前5時頃、TMM区、P大橋近くのQ川河川敷S県の大学校に通う学生、木村濃子さん(19)が遺体で発見された事件で、警視庁は今月1日、濃子さんの父親である木村正竹(49)を殺人および死体遺棄などの容疑で逮捕した。

 

 今年7月、容疑者は濃子さんと交際関係にあったSA市の市議会議員で現在行方不明となっている向井比呂志(42)に暴行を加え、濃子さんを殺害したとみられる。市内の別の場所では争った形跡として男性市議の切断された左手の指が発見されていた。

 

 

容疑者は『娘の帰りが遅い日が続いたのであとをつけてみると、知らない男と会っていた。呼び止めて話し合うつもりだったが、男が娘を連れて逃げようとしたので口論になり暴力を振るった。殺すつもりはなかった』と供述している。

 

 事件に関与しているとみられる男性市議には、濃子さんと数年来にわたって金銭の受け渡しも含む関係があったと思われる。警察は現在行方不明の男性市議を、売春防止法違反の疑いで捜索中。真相の究明にあたっている」

 

 みきちゃんのバッグの中に入っていた捜査ノートの最後のページに、

 

・6月9日、美術館に西村マユ

・フユヒコくん、木村濃子と交際

・首のつけ根にへんなキズ跡 → 死因の一致

・宮下雅秋、向井比呂志、木村濃子の殺害犯、西村(キタムラ)マユ

 

と、メモが残され、最後の妻の名前を黒のボールペンでぐるぐると囲んだあとがあった。

 井村さんの農場にばらばらになったフェンとみきちゃんを卸して帰ってくると、自宅にはみどりさんの姿があった。

 みどりさんは珍しくメイクをほとんどしておらず白いキャップに上下ライムグリーンのスウェットを着用。朝のランニングのついで立ち寄ったみたいな格好で、すぐに彼女だとはわからなかった。食卓にはウィンナーと卵焼き、メープルシロップと生クリームの添えられたパンケーキ。珍しく妻は朝食を用意してくれていた。

 みどりさんは木村正竹を逮捕したのが甲斐という名前の刑事で向井の事件で広域捜査にあたっていた警視庁の警官であること、誠一が個人的に彼を雇っていること、彼はこの2ヶ月くらいずっと県警や市警に出入りし捜査を指揮するふりをしてかく乱してきたことを話してくれた。もともと、誠一とフェン、柳沼はモール建設のために土地を買い集めていた。ほとんどは交渉の末に該当する土地を買い集めたが、正竹だけがどうしても首を縦に振らなかった。正竹は奥さんを早くに亡くし二人の娘と暮らしていた。長女の方は今年の6月に結婚式を挙げたばかりだった。交渉が難航するとフェンは、正竹のもう一人の娘、濃子を人質にとろうとした。誠一はことを荒立てることを恐れ、またこの件で事業全体に対するフェンの発言権を大きくしたくなかったために、独自に正竹を懐柔しようとした。彼は自分の娘を使って正竹を脅そうとした。でも、僕がその申し出を断った。

 濃子を殺したのはワカチャピッポン・ウータンクランというヴェトナム人だった。フェンが雇った傭兵だ。ヴェトナム人が濃子を殺し、妻がヴェトナム人を殺した。僕はそれで怯んでみどりさんの誘導に乗ってリサイタルを開催した。そこで妻が柳沼副所長を殺した。誠一は事態を収集するために向井、濃子の殺害犯として警察に木村正竹を逮捕させた。みどりさんはそこまで話すとコーヒーの最後の一口を飲み干し、帰っていった。

 それから、換気扇を回してマッチを擦り、それをみきちゃんのノートと一緒に使っていないフライパンの中に入れて形がなくなるまで見守った。

「ずっと聞こうと思ってたんだ。君は向井さんを殺したとき、相手が向井さんだってわかってやったの」

「さあ」

「最近、君はなにか計画的にやってるところがあるんじゃないかと思うんだ。考えてることがあるなら教えてくれ」

「必要があれば、その都度言ってる」

 

 その午後、僕らは木村正竹との面会にでかけた。僕らは堂々と正面から警察署の中に入り、勾留中の正竹さんと10分間だけ話をした。孝一さんは前に会った時よりもずっと薄着で痩せて見えた。妻ははきはきした声で声明文を読み上げるみたいにこう言った。

「ここは警察の塀の中です。あなたが無実だということを私たちはよく知っていますが、私たちにはあなたを助けることも、あなたにすべてを話すこともできません。私たちの正義は無力ですとでも言いたいところですが、私たちはまたそうした正義の味方でもありません。私たちはあなたを貶めた人たちと同じくらい悪辣なこともいくらか行ってきました。しかし、私たちはあなたを憐れむ者であり、あなたに味方する者であり、あなたと敵を同じくするものです。私たちはこれからその敵に対して徹底抗戦することを誓います。今日はそれだけを申し上げたくてここに参りました」

 

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