飄々舎

京都で活動する創作集団・飄々舎のブログです。記事や作品を発表し、オススメの本、テレビ、舞台なども紹介していきます。メンバーはあかごひねひね、鯖ゼリー、玉木青、ひつじのあゆみ。

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“スターウォーズ祭”に参加する前に。これまでのおさらいとオススメ動画紹介【フォースの覚醒】

はじめてスターウォーズという世界を知ってから15年が経ちました。その間にシリーズ全6作品を鑑賞する機会にも恵まれました。Ep2Ep3については劇場まで赴きました。旧3部作についてはまだ淀川長治さんがご存命だった頃の日曜洋画劇場の吹き替え版で鑑賞したのをよく覚えています。Ep1に限っては、金曜ロードショーで何度も断片的に見かけた記憶がありますが最初から最後まできちんと見たことは一度もないかもしれません。

 テレビでの洋画放映にまつわる様相は現在、かなり変わってしまいましたが、1990年台から2000年代の頭くらいにかけての間、80年代後半から90年代の頭に流行った洋画がたくさんテレビ放映されていました。スピルバーグやルーカス、ジョー・ダンテやロバート・ゼメキス、アイヴァン・ライトマンが監督を務めトム・ハンクスやダン・エイクロイド、シュワルツネッガーやスタローンが主演する映画がたくさんテレビで流れていた。Ep1でのちにダース・ベイダーとなる主役、アナキン・スカイウォーカーの幼少時代を演じたジェイク・ロイドは、当時クリスマス・シーズンには必ず放映されていた『ジングル・オール・ザ・ウェイ』(1996)でもシュワルツネッガーの息子役を演じています。「ターボマン」と言えば分かる人には分かるちょっとクセになる映画です。

 そういえば今年の頭、ジェイクは交通法の多重違反で逮捕されています。

「スター・ウォーズ」アナキン役を演じた元子役ジェーク・ロイド、カーチェイスの末に逮捕 | 海外ドラマ&セレブニュース TVグルーヴ

キャスト

 子役は大成しないというジンクスを生み出したマコーレー・カールキンが主演する『ホームアローン』シリーズ(1990,92)も90年代に大変頻繁にテレビ放映された映画のひとつです。

 「スターウォーズに出演した俳優はあまり有名にならない」というジンクスをたまに耳にしますが、これは「スターウォーズを通じて有名になった俳優に限りその後あまり有名にならない」くらいが適切な表現かもしれません。旧シリーズ主演のマーク・ハミルやキャリー・フィッシャー、新シリーズでアナキンを演じたヘイデン・クリステンセンはスターウォーズ以外でそれほど俳優としての成功を収めていません。『SUSHI GIRL』(2012)というジャンル映画に出演していた貴重なハミルの近影はなかなか衝撃的です。

 

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 アナキン・シリーズで言えば、同じ子役出身で元々『レオン』(1994)で有名だったナタリー・ポートマンがヒロインを演じています。先に挙げた3人とは異なり、彼女は学業を優先した一時俳優休業を除けば順調にキャリアを積み上げ、マイケル・マン、ティム・バートン、ウディ・アレン、ウォシャウスキー姉弟、ウェス・アンダーソンといった有名監督の作品に次々に出演。『ブラックスワン』(2010)ではアカデミー賞も受賞しています。オビ=ワンを演じたユアン・マクレガーはスコットランドを代表する俳優ですし、ジェダイの一人として登場したサミュエルLジャクソンも『ジュラシックパーク』(1993)から『パルプフィクション』(1994)に至るまで30年にわたり幅広い作品に出演し続ける俳優です。悪の総帥パルパティーンを演じたイアン・マクダーミドはイギリスの偉大な舞台俳優でもあります。

 旧シリーズでハン・ソロを演じ『インディ・ジョーンズ』シリーズ(1981~89)で有名になったハリソン・フォードはスターウォーズから生み出された最大のスターと言えるでしょう。晩年のオビ=ワンを演じたアレック・ギネスも60年代にデヴィッド・リーン監督作品で活躍したイギリスの名優です。『戦場にかける橋』(1957)では戦前の日本の名優、早川雪洲と共演しています。

 政治と経済と娯楽が密接な関係にあった70年代のアメリカにおいて第一線で活躍していた映画監督、スピルバーグ(『ジョーズ』(1975)『未知との遭遇』(1977))、コッポラ(『ゴッドファーザー』(1972)『地獄の黙示録』(1979))そして、スターウォーズの監督であるジョージ・ルーカスの三人が黒澤明の大ファンだったということはとても有名です。大変な読書家でシェイクスピアやドストエフスキーといった西洋の大文学の翻案を多く手がけた黒澤がアメリカ娯楽映画の王道を行く監督に影響を与えたというのは、ある意味必然だったかもしれません。Ep4の『スターウォーズ/新たなる希望』が黒澤の『隠し砦の三悪人』(1958)の翻案として構想されたものというのもまた有名な話です。このオビ=ワン・ケノービ役を三船敏郎がオファーされて断ったという逸話もあります。確かにハミルやクリステンセンのように主演俳優が有名にならないという例はありますが、スターウォーズが何十年にもわたって様々な映画と関わってきたシリーズだということは見逃せないでしょう。

新シリーズ

 なんでこんな話をしているかというと、スターウォーズの大きな魅力は40年近い現実の時間の流れをそのシリーズの中に感じさせることにあると最近、僕自身実感したからです。アナキン・シリーズではじめて触れた僕がこれ、なのだから旧作から一貫してリアルタイムで状況を知っている方はさらに一入でしょう。

 ここまで話してきて、内容の話の全然しない僕がにわかファンであることは十分わかっていただけたかと思います。正直、つい最近までシリーズ最新作の公開にあまり関心を払っていませんでした。

 2012年にジョージ・ルーカスの映画制作会社ルーカス・フィルムをディズニーが買収したというニュースが報じられ、同時にディズニー主導での『スターウォーズ』新シリーズ製作が開始されるとされました。驚くべきことですが、『スターウォーズ』はルーカスが個人的に立ち上げた製作会社でつくられた独立映画でした。巨大な企業や、そうした企業同士が出資して大作映画、所謂広義のハリウッド映画ではなかったのです。スターウォーズはジョージ・ルーカス個人が手がけてきたものと言っても過言ではないでしょう。この買収騒動は『トイストーリー』(1995)(そもそも『トイストーリー』というのがスターウォーズの強烈なパロディ映画です)などで知られるピクサー・アニメーション・スタジオの例を思い出させます。元々ルーカスフィルムのCG部門だったピクサーはその後独立、当時の経営陣には(ルーカスやダース・ベイダーに劣らない野心と才能の持ち主)スティーブ・ジョブズが名前を連ね、アニメーション製作を行うようになっていきます。そして取引先のディズニーとの摩擦を繰り返しながら2006年にディズニーの完全子会社となりました。ルーカスフィルムも同じような道をゆくのか、とその当時感じました。

 スターウォーズ新シリーズに話を戻します。続いて監督としてJJエイブラムスが監督の名前として発表されます。この人は映画の脚本家から出発してテレビドラマ『LOST』やPOV形式のパニック映画『クローバーフィールド』などといった作品で、複雑な作品設定と実験的な手法にも手をつけながら娯楽映画のホープとして期待された若手監督でした。若手と言っても来年50歳ですね。最近は『ミッション・イン・ポッシブル』シリーズや『スタートレック』シリーズを手がけ、アメリカの娯楽映画を一手に担う監督となり始めています。ただ『スタートレック』というのは同じ70年代に『スターウォーズ』と人気を二分したSFテレビシリーズで、それを同じ人が監督するというのは正直、ただの人手不足なんじゃないか、という気がしました。まるで巨人と阪神の監督を同じ人が行うくらいの珍事だと思っています。はっきり言ってがっかりするニュースだと感じました。これがつい最近までの僕のスターウォーズに対する印象です。

 

 それが今週の木曜日くらいにがらっと変わりました。まずはこの動画をみてください。

 


Jimmy Fallon, The Roots & "Star Wars: The Force Awakens" Cast Sing "Star Wars" Medley (A Cappella)

 

 

 ジミー・ファロンというのは日本でいうとエハラマサヒロのような、歌の上手いモノマネ芸人で『ザ・トゥナイト・ショー』という番組のMCを勤めています。著名人や有名俳優を招いて『トークショー』を行う、日本でいうと「テレフォン・ショッキング」や「徹子の部屋」みたいなものでしょうか。元が芸人なので、芸達者な俳優と口パク芸をテレビで披露するというショウも行います。この人が発起人となってアカペラで新作『フォースの覚醒』のキャストが『スターウォーズ』の劇中曲を次々と歌っている。大量のパロディを生み出した作品ですから、シリーズに興味のない人でもオープニングテーマやある世代の日本人には親しみ深い『電波少年』で使われたベイダーマーチなんかはほとんどの人が聞いたことがあるのではないでしょうか。僕はこれを聞いて、多分スターウォーズシリーズに直接関係ないこともたくさん思い出しながら感動してしまいました。

 何十年にもまたがっていろんなものに影響を与えたシリーズがディズニーというさらにまた影響力の大きな屋台骨を与えられてお祭りを始める。影響力と層の厚さと時間の幅という点でこんなに規模の大きなお祭りも稀だと今は、思います。参加しない手はないのではないでしょうか。