三谷大河『真田丸』 負け戦のプロ・大泉洋 起用のすばらしさ。
玉木(@tamakisei) です。
ご覧になっていますか、『真田丸』。
日本を代表する脚本家・三谷幸喜が12年ぶりに手掛けるNHK大河とあって、例年以上に注目を集めています。
ぼくは、三谷幸喜さんは日本を代表する脚本家であると同時に、一流のキャスティングプロデューサーであると思っています。
今回も、主役に堺雅人(12年前の『新選組!』で注目を集め、『半沢直樹』などヒット作の主演俳優に成長)をすえるなど、話題性バツグン。
そのなかでも。
三話まで見て、真田信幸を演じる大泉洋の使い方がすっごくハマっている、と感じています。
大泉洋と三谷幸喜
いまや、国民的俳優となった大泉洋。
彼は学生時代から演劇をやっていたこともあり、喜劇界の大先輩である三谷幸喜を一方的に尊敬していたそうです。
しかし、両者の接近は意外と遅く。
2010年のフジテレビドラマ『わが家の歴史』にチョイ出演が最初でしょうか?
(つるちゃんという役)
その後、舞台や映画で徐々に仕事を一緒にするようになっていきます。
そうした経験があるからか、今回の大河は大泉洋の魅力がめちゃめちゃうまく出されているように感じます。
プロデューサーとしての「人気があるから話題になる」という観点と
脚本家としての「実力があるからドラマがはえる」という観点のバランスがすごく、いい。
いまのところ
大泉さんの描かれ方で、いいなあ!と思っているところはざっくり言うと二つ。
・キャラとは異なるシリアスな演技で、逆に笑かしにきている
・「ひどい目に遭ったとき、大泉洋は爆発する」というテーマが一貫している
真面目な顔で面白いことを言う
大泉さんといえば、俳優業もさることながら『水曜どうでしょう』などのバラエティでも活躍しています。
(追記:3/30発売の最新作は『ユーコン川160キロ〜地獄の6日間〜』!
前枠・後枠でバンジョー兄弟をやっていた人が、今や大河で真田兄弟です)
今回の『真田丸』の事前情報として、さかんに出てきていたのが
そんな「お笑い担当」の大泉洋がこれまでにないシリアスな役柄をやっている、という情報。
確かに、真田信幸は「まじめ」「慎重」「しっかりもの」として描かれています。
でも、それだけではない。
「まじめ」な人特有のおかしみが、三谷さんの脚本やドラマのつくりに出てきているのです。
たとえば、第二話で(重大なネタばれではありません)
農民のふりをするために、高畑敦子演じる母の顔に泥を塗るシーン。
「私が塗って差し上げます」「母上は、だれよりも気品がありますから、だれよりも多く塗りませんと」と、
まっすぐで優しいテンションのまま、高畑敦子の顔に泥を塗りたくる。
こういう「真顔でおかしなことをやる信幸」が面白い。
意外に大泉洋がやってこなかった役柄だと思います。
おみまいされてる大泉洋が面白悲しい
信幸は真田家の嫡男。堺雅人演じる信繁(幸村)からも信頼されているよき兄です。
でも、なんだか、みんな信幸をぞんざいに扱う!
(まるで、『水曜どうでしょう』のディレクターやとんねるずや明石家さんまに雑に扱われる「大泉洋」のように)
草笛光子演じるばばさま「とり」は、なぜか大泉洋が話しかけたときだけ「ああ?お前の声は届かん」と言葉を聞きとらないし、
西村雅彦(このキャスティングも最高)演じる室賀正武には「だまれ、こわっぱ!」と一喝されるし、
草刈正雄演じる父・昌幸からは、ついに第三話で「お前は芝居ができんからな」と言われてしまいました。
大河の準主役ですよ。その人間に向かって「お前は芝居ができん」。
このセリフ思いついたとき、三谷さん嬉しかったろうなあ。
大泉さんも演出家も、その「意図」を存分にくみとり、「だまされ芸人ここにあり!」「永遠の若手としての面目躍如!」と言わんばかりの、仕上がりになっています。
たぶんここからも、信幸はひどい目に遭っていくんですよね。
(ここらへんの日本史、すっかり忘れてしまって、ここからどうなるかよく分かってないんですが、)
その「ひどい目に遭っていく」「ぞんざいに扱われる」というギャグ的なもの(タレント「大泉洋」的なもの)が、いつしか大きな亀裂となり、歴史の悲劇につながるまでを、三谷さんは大泉洋という役者の身体を借りて描き切っていくのだと思います。ああ、楽しみだ。
三谷幸喜さんの描く敗戦の将は、なんとも美しい(今回の武田勝頼なんてまさに)。
そして、大泉洋はいつだって負け戦のプロです(第三話なんか、だまされ芸人の面目躍如!)。
『ギャラクシー街道』(未見です)があったので心配だったのですが、このタッグだけで、見続けていけます。
加えて、大河好き、歴史好きからは「藤岡弘、が本多忠勝はベスト」とか「作家の岩下先生が明智光秀はさすが」とか聞こえてきます。
また、武田信玄の亡霊を演じた林邦史朗さん(殺陣師として長年大河に関わり、撮影の一カ月後、がんで亡くなる。『真田丸』が遺作となった)の存在感には凄みを感じました。
大河はまだまだ、続きます。
ここから、堺雅人や大泉洋がどんなふうに成長し、どう幕を下ろすのか。
今年一年、毎週楽しみにしようと思います。
取り急ぎ。
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