お題に沿って本紹介!【「よまいでか」始動記念 読書放談その2】
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あかひね:はい、再び始まりました
かみしの:というわけでね、世界はクソなんですけども
あかひね:大分話が脱線しちゃいましたが、さっきのズッコケの話、割と
面白かったと思うんですよ。お互いが自分の読んできた本を語る、みたいな。そういうのが対談の醍醐味ではないかと。というわけで、テーマを決めて二人でそれに合う本を言い合うってのはどうでしょうか
かみしの:いいよ。やってみようか
あかひね:「~な本」みたいな感じで。どういうお題がいいかな
かみしの:まずはスタンダードなところから行ったらいいんじゃない?「衝撃を受けた本」とか
あかひね:じゃあ、それで行きましょう。「衝撃を受けた本」!
第一テーマ「衝撃を受けた本」
(二人しばし熟考)
あかひね:よし、決まった
かみしの:どっちからいく?
あかひね:じゃんけんしましょう。じゃんけんほい!(勝った)じゃあ、僕は後攻で
かみしの:衝撃を受けた本かぁ……一番、と言われるとやっぱり舞城王太郎の『ディスコ探偵水曜日』になってしまう
あかひね:へー
かみしの:思想とかそういう考え方の面じゃなくて単純に本として衝撃を受けたのは『ディスコ探偵水曜日』だね
あかひね:どういうタイプの衝撃なんですかそれは。舞城王太郎っていうとけっこう文体が独特っていうイメージですけど、そっち系ですか?
かみしの:文体ももちろんあるんだけど、なんだろう、ここまで壊していいのかっていう。途中で探偵が推理合戦をして、次々推理をしていくっていう、『毒入りチョコレート事件』みたいなミステリー的な面もあれば、急に時空が飛んだりするSF的な面もあれば、図面があってその図面が全く意味がわからないっていう館モノ的な面もあれば、表紙はラノベみたいな感じだし。ラノベでありつつ、ラノベ読者があれを読んだら確実に衝撃を受けるという。あと、もちろん舞城王太郎の作品は愛とか勇気が中心だから、その愛とか勇気が直接殴ってきたりだとか。文庫は上中下なんだけどさらっと読めるし、さらっと読めるけど受ける衝撃がでかいっていう。なんだろ、これ読んだらもうエンタメ作品何も読めない、みたいな気持ちになってた。しばらく。
あかひね:なるほど。舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』ですか
かみしの:うん。ミステリー?SF?ラノベ?って、よくわからない衝撃を受けたね。
あかひね:じゃあ、僕の番ですね。僕はだいたいこういう時にいうのは筒井康隆の『メタモルフォセス群島』なんですよ
かみしの:ほうほう
あかひね:多分、僕がこの本から受けた衝撃は「SFショック」なんですよね。はじめてSF的ないわゆるセンス・オブ・ワンダーを感じたのがこの作品なんだろうなと、今になると思う。それまでSFって僕星新一しかしらなかったんですけど、それに物足りなくなって初めて読んだ筒井康隆の短編がこれなんですよ。出会いは図書館の本棚の裏でぐちゃぐちゃになってるのを発見するっていう、最悪なかたちでしたけど
かみしの:(笑)
あかひね:粒ぞろいの短編集なんですけど、一番衝撃を受けたのが表題作です。核実験のせいで動物の変な突然変異がいっぱい起きてしまった群島に派遣された二人調査員が主人公の話で。
かみしの:うん
あかひね:言ったらネタバレになっちゃうから内容はあまり言えないんですけど、うーんと、植物って動物の修正を利用して繁殖するじゃないですか。それを人間にも当てはめてるんですよね。この作品では。とにかくすごく当時は衝撃を受けました。そうきたか!みたいな
かみしの:筒井康隆ね。きれいな筒井ときたない筒井とわけのわからない筒井に分けられるっていうけど
あかひね:これはもしかしてきれいな筒井に入るんじゃないかな。端正な短編でした。ラストに大便も漏らさないし(笑)。最後にきれいにストンと落ちて。しかも僕はそのオチを全く予想できなかったんですよね。でも理屈は通ってるという。本格ミステリみたいな
かみしの:筒井って『ロートレック荘事件』って書いてなかった?
あかひね:有名ですね。僕は読んだことないんですけど
かみしの:あれもミステリだよね
あかひね:あと、あれもありますよ。『富豪刑事』もありますよ(笑)
かみしの:富豪刑事あったねー。金で解決するやつ(笑)
あかひね:あれ好きだったなー
かみしの:筒井も何でも書ける感じあるよね。最近あれだな「問題外科」とか読んだな。あれは何に入ってたかな?『くたばれPTA』か『最後の喫煙者』か
あかひね:短編っていっぱい読んでもけっこう忘れちゃうんですよね
かみしの:忘れちゃうね。あ、そうだ。あと筒井の作品で『座敷ぼっこ』ってのがあってね。これはきれいな筒井なんだけど。筒井の印象ってエログロナンセンスだけど、これは『時をかける少女』をさらにほっこりさせた、みたいな
あかひね:そういうのも書ける
かみしの:そうだな、綾辻行人の『ANOTHER』ってあるじゃない?
あかひね:アニメ化された
かみしの:あれを短編に凝縮した感じだったな
あかひね:えーっと、これで第一テーマは終わりですか。
かみしの:そうだね。
あかひね:じゃあ、第二テーマを決めましょう。
第二テーマ「泣けた本」
あかひね:次のテーマ。何がいいかな
かみしの:ざっくりと
あかひね:……泣いた本ってあります?
かみしの:泣いた本!これはむずかしいねえ
あかひね:泣いたことあったかな、本で
かみしの:泣いた本……
あかひね:まあ、泣くに準ずる感動というか
かみしの:ウルっときたやつね
(しばし熟考)
かみしの:……やっぱ太宰治の『津軽』かな
あかひね:泣けるんですか
かみしの:いや、ふつうは泣けない……ような気がするんだけど。太宰治が青森県出身なのよ。でもその青森をずっと題材にしてなくて。土地としての青森を。で、その青森の風土記のようなものを書こうって言って、青森の人間関係とか、方言とかそんなものを書いていた作品なんだけど。そんな厚くもなくて200ページくらいの作品で。それで太宰治の育ての親の、乳母さんかな?「タケ」って女性がいて、そのタケに最後、会いに行こうっていう。そこでその最後に、タケに会いに行って、積もりつもって思いが全部あふれたところは、すごいじんわり来たし。あとねえ、「津軽」の最後の締めくくりかたがすごいかっこよくてね。太宰治って小説の書き出しと最後をがんばる人なんだけど。その『津軽』の終わりが゛さらば読者よ 命あらばまた他日 元気でいこう 絶望するな では失敬゛っていう
あかひね:あー、いいですねえ
かみしの:かっこいい
あかひね:何かちょっと人を食った感じで飄々として
かみしの:そう。飄々としてて
あかひね:でもどっか愛が感じられますね
かみしの:そうそうそう。コピーライター的なセンスがすごくあって。太宰治は。それこそそこら辺のどっか一小節をちぎってきて、ポスターとかに貼れば、なんか糸井重里みたいになれる感じの
あかひね:へええ
かみしの:『女生徒』っていう作品で゛おばけは、めがね゛っていう一節があって、しかもコピーライトにありがちな「、」をつけて
あかひね:゛不思議、大好き゛みたいな(笑)
かみしの:そうそうそうそうそう。ああいう感じで。なんか言葉それ自体の力がすごいあって。うーん。だから、やっぱり津軽かな。あとは大槻ケンヂの『リンダリンダラバーソウル』とか。そこらへんかな。なんだろうな。泣くというか胸が熱くなるというか。芦原すなおっていう人の『青春デンデケデケデケ』とか
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あかひね:聞いたことあるなそのタイトル
かみしの:直木賞とったかな。ま、バンドの小説で、すごいストレートに文化祭でバンドをやる話なんだけど。それこそズッコケ三人組のちょっと大人バージョンみたいな
あかひね:はいはいはいはいはい
かみしの:「バンド組もうべー」って言って。ま、田舎もんなんだけど
あかひね:(笑)
かみしの:商店街とかいろいろ巻き込んで、いろいろ一悶着あって、最後の文化祭のシーンで、今まで出てきた商店街の人とかがみんな文化祭に来てくれて、その前でバンドする、みたいな。最高!っていう気分になったね
あかひね:そういうウルっともありね
かみしの:そう。そういう感動的な意味も含めれば、さっきの『リンダリンダ~』とか、デンデケもそうだし
あかひね:うーーん、何だろ。感動的な本、あんま読んでないな。うーーん。あ、町田康の『告白』はかなりキましたね
かみしの:あーー。そうねえ
あかひね:どっか自分の中に主人公と重ねあわされるものがある感じ。いろいろ頭の中だけで理屈つけて、最終的に出てきた答えが周りの人に変な風に思わせてしまうっていう。で、ものすごく共感できちゃうのにそいつが何ひとついい目見ないっていう(笑)
かみしの:あれ外から見てるとさ、悪い方向に進むの分かり切ってるじゃん?もう「やめろ熊太郎!やめろ熊太郎!」って
あかひね:そうそう!「勝手なことするな!牛はそこにじっとさせとけ!」って(笑)
かみしの:道化の悲しさというか
あかひね:「やめろ熊太郎!」っていいなあ(笑)
かみしの:読みながら何度つぶやいたか。「そいつはやめとけ!」って
あかひね:そうそう。「お前は無能なんやから!」って
かみしの:あれは確かに胸にくるね
あかひね:他に何かあったかなあ。感動って忘れやすいんですよねえ……
かみしの:そういうのだったら、いろいろあるなあ
あかひね:あ、扉を開けましたか?
かみしの:じゃあ、場つなぎとして。太宰治の『黄金風景』(『女生徒』収録)
。あと、夏目漱石の『夢十夜』とか。あと、宮本輝の『泥の川』っていう
あかひね:めっちゃありますやん!
かみしの:うん。この辺のやつは今思うとウルっときてた。簡単に話すと『黄金風景』は昔バカにしてた奴らが成功して挨拶に来て。で、その幸せな家族の風景が最後、夕日をバックに映って。「負けた。僕は負けた」みたいな感じで終わる
あかひね:むなしい……
かみしの:『夢十夜』はショートショートなんだけど、それこそ。三ページくらいの。「こんな夢をみた」から始まる。全十夜あって。その第一夜が、死にそうな女の人がいて、「またや百年後会いに行きます」みたいな。で、その人が死んでしまって、そこに百合が育って、その百合が傾いて主人公の男に口づけして、そこで初めて待ち続けていた男が「そうか、もう百年は来ていたのか」って言って終わる、みたいな幻想的な小説で。宮本輝はいろいろツッコミどころもある人なんだけど、泥の川はもう「良いジブリ」
あかひね:良いジブリ(笑)
かみしの:もう、良いジブリ。最後の方で、女の子のワンピースかな?から蛍が一斉にぶわーって出てくるシーンがあって。
あかひね:あ、ジブリっぽい!
かみしの:ああー、いい!!って思って。純文学までいったらウルっとした本、いろいろあった
あかひね:あ、そういえば『くちびるに歌を』良かったな
かみしの:『くちびるに歌を』ね。中田永一か
あかひね:ラストにみんなで歌うってのがよかった。あと灰谷健二郎の「兎の目」、僕大好きなんですけど。それも。ただこれは同時に痛快なんですよね。あの人、けっこう教師が主人公の話いろいろ書いてるんですけど。もともと小学校教師なんで。どの作品もちょっと変わり者で愛らしい先生を描くんですよね。「兎の眼」でも30代くらいで男性のそういう先生が出てきて。その先生が最後、工場の建設か何かに反対してハンストするんですよね。生徒の安全の為に。それで……結局勝つんだったかな。最後に最後ご飯食べずにふらふらになっちゃって歩けないその先生をリヤカーに乗せて、貧しい集落の中を子供たちみんなで行進する、みたいな
かみしの:ほう
あかひね:最後にどんちゃか終わる感じが好き。そういう意味では『四畳半神話大系』もよかったな。森見登美彦の
かみしの:あー、四畳半神話大系いいね!「僕なりの愛だ」って。森見登美彦的世界を探して大学時代を過ごしてしまったからね。あんなん読んだら木屋町行きたくなるでしょ。猫ラーメン探すでしょ。「月面歩行」のmoon walk行ったりとかね。対岸に花火飛ばすし。
あかひね:古本市は行きましたね
かみしの:あと河原町の交差点でええじゃないかしたくなる。あんなに魅惑的なシーン書けるってすごいよね。森見登美彦
あかひね:ええじゃないかしたいなあ。あとねえ、京大の学園祭、行きたくなりますよね。「ダルマ落ちてないかな」って
かみしの:ほんとすごいよね。森見登美彦
あかひね:……えーーっと、そろそろ、次のお題行きましょうか。
かみしの:今まで「衝撃を受けた本」「泣いた本」と来たから……次は感情から離れてみようか
(かみしのが提案する「感情を離れた」お題とは!?次回に続く!)
新企画「よまいでか」では、かみしの氏(上の対談の本に詳しい方)がみなさんに紹介された本を読んで感想を書いていく企画です。このブログのコメント欄や、あかごひねひね、かみしののツイッターアカウントまで、ぜひ本をご紹介ください!
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