もはやブックトーク大喜利【「よまいでか」始動記念読書放談 その3】
この記事は以下の記事の続きです。
〜〜新しいお題設定〜〜
かみしの:いったん感情から離れて次のお題は……ウーロン茶みたいな本!
あかひね:ウーロン茶みたいな本!?(笑)新しい方向に来たぞ
かみしの:これはウーロン茶だな!っていう。自分で言っといて思いついてないけど(笑)
あかひね:難しいな……ウーロン茶……
(しばし熟考)
かみしの:……久生十蘭の『黄泉から』って作品かなあ
あかひね:ウーロン茶感あります?
かみしの:ウーロン茶感ある。どういう点がウーロン茶かというと、一般の人はまあ、緑茶を飲みますよね?
あかひね:お、なるほど
かみしの:やれ綾鷹だ。やれお〜いお茶だ。やれ伊右衛門だ。これがいわゆる江戸川乱歩ですよ。綾辻行人ですよ。宮部みゆき、辻村深月とまあいっぱいいるわけですよ。で、ちょっとこじらせると夢野久作に行くわけですよ。『ドグラ・マグラ』とかね。三大奇書。夢野久作の『ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、あと中井英夫の『匣の中の失楽』。いや、まてよ、と。その系列にまだ一人いるぞ、と。久生十蘭ですよ
- 作者: 夢野久作
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1976/10
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あかひね:知らないなあ(笑)
かみしの:まずその知らないってところでウーロン茶感がある。普通はウーロン茶飲まないのよ。ウーロン茶飲む人は緑茶の味に飽きたっていう点もあり、健康志向もある。で、久生十蘭は夢野久作に比べたら健康。夢野久作は読んだら精神がおかしくなるとか言うし、死体たくさん出るし、精神系の話だけど、久生十蘭はまず短編としてすごく良い。文章がすごく良い。文章の魔術師とか呼ばれてて。久生十蘭の小説好きな人をジュウラニアンとか言ったりする。すごい端正な文章で、世界短編コンクールの賞にも選ばれてる
あかひね:すごいなあ
かみしの:の、岩波文庫から出てる短編集の一番最初の、短い十ページくらいの作品で。ホラーと言えばホラーなんだけど、読後は心が温まるようなそんな作品で。だから緑茶に飽きた人でもウーロン茶に走って
あかひね:なるほど
かみしの:同じお茶の系統だけれども、よりちょっと人が飲まないようなところであるし、夢野久作やら江戸川乱歩に比べたら健康的な面もあるので、久生十蘭かなと。ウーロン茶感かなと
あかひね:あー、なんかいい具合にまとめやがったなー
かみしの:さ!次どうぞ!ウーロン茶感!
あかひね:うーー、ウーロン茶、ですか。なんだろうな?渋み?うーん、じゃあ僕は……小説じゃないんですけど(笑)……なぎら健壱の『日本フォーク私的大全』
かみしの:ほほう(笑)
あかひね:渋み。あと色み。ちくま文庫なんでなんか色みが茶色っぽいです(笑)
かみしの:装丁がね(笑)
あかひね:これ何かっていうと、なぎら健壱ってあの人、噺家みたいですけど元々はフォークシンガーなんですよ。で、なぎら健壱が当時のフォーク界のことを私的にザーっとアーティスト順に書いていった本なんですこれ。もちろんこれを書いてる時点ではなぎら健壱は役者業、タレント業で成功して今の立場の状態で書いてるんで、自分の青春の記憶であり、同時になぎら健壱さんの中にも「フォークシンガーがテレビなんかに出るなんて……」とか、そういうところに対する葛藤もあったりして。そういうところも含めて……渋み、って感じ
かみしの:渋み(笑)ハードボイルドとは違う?
あかひね:違う。おっさんが理性的に単純なエピソードとして自分の青春時代を語ってるんだけど、その語り口に見え隠れする若干の感傷みたいな。それが渋み
かみしの:渋みね。良いワードだね。渋み。なんか大喜利みたいになってきたね(笑)
〜〜お題変更〜〜
あかひね:次のお題は僕ですか?
かみしの:うん
あかひね:じゃあ、えーーっと……セーラー服で……うずくまる……女子高生っぽい本!!
かみしの:セーラー服でうずくまる女子高生っぽい本!
あかひね:何故うずくまっているかはお任せします
かみしの:うーーん……その系統でいくと真っ先に頭に浮かぶのは大森靖子なんだけど、彼女はシンガーだから違うし。ちょうど今読んでる最果タヒっていう詩人が書いてる『渦森今日子は宇宙に期待しない』かな
あかひね:小説ですか?
かみしの:うん。小説。これ大森靖子が帯書いてたりとか、表紙が西島大介だったりとかいろいろあるんだけど、ただ、"うずくまる"ではないからねえ……と、考えると、綿矢りさの『インストール』とかでもいいんだけど……いや、本谷有紀子……?
あかひね:思えば僕は女性が出てくる本、読まないなあ
かみしの:パッと考えると本谷有紀子の『生きてるだけで、愛。』か綿矢りさの『ひらいて』か金原ひとみの『アッシュベイビー』なんだけど、"女子高生"でいうなら『ひらいて』かな
あかひね:どんな本ですか?
かみしの:……疾走する自意識というか
あかひね:何か聞き覚えあるなあ(笑)ファウストに百回くらい載ってたんじゃないですかその言葉
かみしの:なんかね『インストール』があって『蹴りたい背中』があって、その後しばらく断筆してて
あかひね:え、そうだったんですか
かみしの:多分スランプだと思うんだけど。で、『夢を与える』とかいろいろ作品があって、これはけっこう新しめの作品なんだけど。『蹴りたい背中』の方向が良い方向に行った感じ。やっぱりこう、男の子がいて、その男の子に迫る女子高生的自意識の感じ。教室で裸になって迫るみたいな。けっこう、後期の綿矢りさって文中のセリフをタイトルにするみたいなところがあって、『勝手に震えてろ』とか。『ひらいて』もそうで何をひらいてかは言わないんだ。男の子に対して。でも「ひらいて」ってずっと言い続ける。一番わかりやすい解釈をすれば"心を"なんだろうけど。やっぱその自意識感に"うずくまり"を感じたね。
……では、ここで面白い答えを期待するよ
あかひね:あーー……難しいな。えっとね、シリーズで良いですか?
かみしの:いいよ
あかひね:ラノベです。文学少女シリーズ
かみしの:あー、野村美月ね
あかひね:あれは僕、けっこう好きだった。なんか、こう表紙の絵も普通のラノベと違いますよね。
かみしの:そうだね。ちょっとなんかこう、我が強くない
あかひね:少女マンガに近い絵柄で、水彩っぽくて、なんかこう、壊れてしまいそうな青春みたいな。ヒロインの、物語を食べる女の子も笑ってるけど実は何か家でつらいことあって、みたいな。1作目の『死にたがりの道化』とかもそうですけど、表と中身の、外見と内面の違い、みたいなところをちょっとファンタジー入った世界観で書いていく感じがよかった。辛気臭さもあるんですけどね。じめじめした。瑞々しさと同時に心をチクリと刺す辛さがあって。でも日常はなんだかんだで明るい感じなんですよね。でもそれに主人公は気づいて、直視して立ち向かって行くみたいな。"うずくまる"っていうところがその負の部分で、あと"セーラー服の女子高生"っていう表面的なイメージが一緒にあるというところで、このシリーズです。
かみしの:なるほどねー
【次回、最終回!!お題がさらに収拾つかなる!!つづく!!】