飄々舎

京都で活動する創作集団・飄々舎のブログです。記事や作品を発表し、オススメの本、テレビ、舞台なども紹介していきます。メンバーはあかごひねひね、鯖ゼリー、玉木青、ひつじのあゆみ。

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2016年に読んだ本 オススメ10選

こんにちは、あかごひねひねです。

年末になると様々な2016年ベストをいろいろな人が発表します。流行語やら映画やらゲームやらツイートやら。

僕も何か2016年ベストを発表したいと思ったのですが、流行には疎く、映画はあまり見ず、ゲームはスプラトゥーンを一年ずっと遊び倒し、ツイートは気に入ってもいいねしないので記録に残っておらず、といった具合。

そこで、いつものことで芸がないですが、今年読んだ本の中でベスト10選を発表したいと思います。

 

その1『モナドの領域』

 

モナドの領域

モナドの領域

 

 

1作目は「筒井康隆最後の長編にして最高傑作」との宣伝文句で売られていたこちら。いちおう小説ですが、途中で主人公GODが世界観を他の登場人物に説明する部分が割と長いです。

しかし、それでもスラスラと読ませてしまうのが筒井康隆の実力。具体的な作品の内容はあえて書きませんが、僕もはかなり楽しく読みました。個人的には、普段からわざと小難しいことを考えては哲学者ぶって悦に入ってる偏差値55くらいで20歳前後の痛い文系の人(僕のような)に読んでいただきたい。多分いい感じに気持ちいいはず。

 

その2『折れた竜骨』

 

 

折れた竜骨 上 (創元推理文庫)

折れた竜骨 上 (創元推理文庫)

 

 

 

折れた竜骨 下 (創元推理文庫)

折れた竜骨 下 (創元推理文庫)

 

 

2作目は米澤穂信『折れた竜骨』。筆者の米澤穂信は青春本格ミステリの「古典部シリーズ」や「小市民シリーズ」などの作者で、若い世代の支持が厚いミステリ作家です。それもそのはずで、この人はデビュー以前はネット上で自作の小説を公開していた上に、出身はラノベ畑という、なんとも今風?なミステリ作家さんなのです。角川のラノベルーベルのミステリ限定の新人賞を、古典部シリーズ第一作の『氷菓』が取り、それが作家デビューとなりました。しかしその後、そのミステリラノベのレーベルそのものが不振になって廃止され、現在古典部シリーズは普通の角川文庫から出ています。

『折れた竜骨』は、そんな筆者の特徴が特に色濃く出た作品です。舞台は中世のイギリスで本格ミステリなのですが、なんと魔術や呪術の存在と効果がこの小説内では肯定されています。いわゆるゲームやラノベでいう「剣と魔法の世界」に近い世界観で本格ミステリを成立させている。とんでもない作品です。登場人物も「サラセン人」やら「ザクセン人」やら「呪われたデーン人」やらかなり心踊る響き。世界史の好きな人は特に楽しめるかもしれません。

 

古典部シリーズ、小市民シリーズ↓

氷菓 (角川文庫)

春期限定いちごタルト事件 小市民シリーズ (創元推理文庫)

 

その3『いまさら翼と言われても』

 

いまさら翼といわれても

いまさら翼といわれても

 

 

米澤穂信の作品をもう一作。これはつい先日出たところの古典部シリーズの最新作です。アニメにもなり、近々映画にもなるらしい古典部シリーズ。まだ読んでない人は一読をお勧めします。

 

※アニメ『氷菓Blu-ray

「氷菓」BD-BOX [Blu-ray]

 

その4『夏のルール』

 

夏のルール

夏のルール

 

 

ここでいきなり絵本を紹介します。僕が2016年でもっともショックを受けた本かもしれません。幼い2人の兄弟の周りで全く説明なく展開される独特の世界観の一枚絵と、それに対応する「〜しなければいけない・してはいけない」という一文のルールが見開き1ページに書かれるスタイルが最後まで続く絵本。ストーリーらしきものはありますが、それについても全く説明はありません。絵と世界観がとにかく素敵。ネットの画像検索でもいくつかの絵は出ますので、見てみてください。超オススメです。

 

その5『ランボー怒りの改新』

 

ランボー怒りの改新 (星海社FICTIONS)

ランボー怒りの改新 (星海社FICTIONS)

 

 

えっと、これは奈良をテーマにした短編集です。説明の代わりに表題作「ランボー怒りの改新」から一文を引用したいと思います。

"推古天皇の御代、トンキン湾事件をきっかけにして蘇我馬子が火蓋を切ったベトナム戦争は泥沼化し、馬子が世を去ってその息子蝦夷の代になっても終息の兆しを見せていなかった。"

以上です。こんな内容です。読んでみて、としか言えません。

 

その6『ざんねんないきもの事典』

 

おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典

おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典

 

 

様々ないきもののざんねんな習性や特徴が、可愛いイラストとともに説明されている本です。子供向けかと思いきや、大人が読んでも十分面白い。可愛い動物のイラストが好きな人には特にオススメ。字ばかりの本は肩がこりますし、たまにはこういう本でほっこりするのも良いですよ。

 

その7『星を継ぐもの』

 

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 

 

SFオールタイムベストのアンケートなどで必ず上位に来る作品。表紙は宇宙服の人間ですが、物語のほとんどのパートは地球が舞台です。派手なアクションやスリルやサスペンスはなく、宇宙での発見→検証→仮説→新発見→検証→仮説を繰り返していく中で、最初に提示された巨大な謎が徐々に解明されていきます。その論理展開がめちゃくちゃ面白く、一気に読んでしまいます。SFというとスターウォーズバック・トゥ・ザ・フューチャーのような宇宙や未来を舞台にした派手なドラマをイメージしがちですが、この本はむしろ上質なミステリに近い印象です。とにかく超オススメ。

 

※続編↓

ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)

巨人たちの星 (創元SF文庫)

 

その8『銀河ヒッチハイク・ガイド

 

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

 

 

SFをもう一作。イギリスの作家アダムズが書いた、有名なコメディSF『銀河ヒッチハイク・ガイド』です。元はイギリスで大人気を博したラジオドラマで、それを脚本家が自らノベライズしたのがこの作品のようです。と、いってもラジオドラマより小説としての方が有名な印象があります。内容はとっちらかってて荒唐無稽なので、あまり説明するしても意味がない気がします。けっこう前に映画にもなっており、そちらもオススメ。あと、本か映画を観た後に必ずグーグルで「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」を検索してください。

 

※続編↓

ほとんど無害 (河出文庫)

宇宙の果てのレストラン (河出文庫)

宇宙クリケット大戦争 (河出文庫)

 

その9『異世界居酒屋のぶ』

 

異世界居酒屋「のぶ」

異世界居酒屋「のぶ」

 

 

ネット上の小説サイト「小説家になろう」に連載されていた異世界ものの小説。異世界のある国の路地裏と現代日本の居酒屋の店先がなぜか繋がっていて、王宮の兵士や貴族、王族、商人ギルドの頭目などが料理を食べては舌鼓を打つ、というお話。

読んでるうちに確実に居酒屋に行きたくなりますが、居酒屋なので実際に行けるのがうれしいところ(フランス料理とかはこうはいかない)。まだ小説家になろうのサイトで閲覧可能なので、まずはそちらで読んでみてもよいかも。書籍版は少し改稿されていて、書き下ろしエピソードも増えていますが、まあ8割はネットで読める内容と同じです。

 

その10『まさかジープで来るとは』

 

 

芥川賞作家、又吉直樹の『火花』、ではなくこちらをオススメ。ピースの又吉と作家のせきしろの作った自由律俳句(と、一部短文)がずーっと書いてあるだけの本。切れ切れのセンスが凝縮された一文が立て続けに書かれているので、どんなスピードで読んだらよいのか分からなくなります。いくつか紹介すると、

 

"魚はこっちを見ていない" せきしろ

"他の場所で会うと小さい大家" 又吉

"走らなくても間に合ったんじゃないか" せきしろ

"鍋沸騰しろ会話がない" 又吉

 

など、一行で少し滑稽な情景が目に浮かぶ自由律俳句が大量に収録されています。読んだら確実に自分でも作ってみたくなること請け合い。

ただ、実はこれはシリーズ第二集なので、その辺の順番にこだわる人は第一集のカキフライが無いなら来なかった (幻冬舎文庫) から読むと良いかと思います。カキフライ〜は去年に読んだのでこの10選には載せられなかったのですが、正直どっちから読んでも同じです。

 

以上、僕が今年読んだ本の中からオススメを10作、選んでみました。何かの参考になれば、と思います。

 

それではみなさん、良いお年を。