新訳「Catch The Wind」
ご存知か
まず、みなさんにお尋ねしたい。
ドノヴァンというシンガーをご存知だろうか。
フォーク・リバイバル・ブーム
かつて1960年頃、アメリカでフォーク・リバイバル・ブームなるものが起こった。
「フォーク・ソング」は日本語で「民謡」と訳す。フォーク・リバイバル・ブームとは、要するにアメリカの民衆に歌い継がれる古い歌や、その形式で作られた新曲のブームである。これは、当時の公民権運動などとも結びつき、一大ムーブメントとなった。
このブームが輩出したシンガーで、日本で最も有名なのは、後にロックに転向するが当時は”フォークの貴公子”と呼ばれたボブ・ディランだろう。また、PPM(ピーター・ポール&マリー)も一般の知名度はそこまでかもしれないが、彼らが歌った『パフ』を音楽の授業で習った人も多いと思う。
彼らの他にも、フォークの元祖ウッディ・ガスリー(ディランを含め、彼から影響を受けたシンガーを「ガスリー・チルドレン」と呼ぶ。時代は少し後になるがブルース・スプリングスティーンなどもガスリーの影響を受けたチルドレンである)や、その盟友ピート・シーガー。”フォークの女王”ジョーン・バエズ、ジャック・エリオット、キングストン・トリオ、トム・パクストン、エリック・アンダーソン、サイモンとガーファンクルなど、多くのシンガーが現れた。
ちなみに最近、コーエン兄弟によって「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 〜名もなき男の歌〜」という映画が作られたが、これはフォーク・リバイバル・ブーム直前のニューヨークのグリニッジ・ヴィレッジ(後にブームの中心となる場所)を舞台に、1人のフォーク・シンガーの一週間を描いた作品である。
日本でのフォーク・ブーム
アメリカで起きたブームは数年後に日本にも輸入され、日本にもフォーク・ブームがおとずれた。高石ともや、岡林信康、ザ・フォーク・クルセイダーズ、高田渡、中川五郎、五つの赤い風船、遠藤賢司、小室等などがデビューした。
現在も有名な森山良子や吉田拓郎、南こうせつ、井上陽水などもこのブームに乗って現れた。もはや歌手であることを忘れられかけているが、泉谷しげるやなぎら健壱も同じくフォークシンガー出身である。
さらに松任谷由実(当時は荒井由美)や、忌野清志郎のRCサクセションもデビュー当時はフォーク歌手扱いだった。また、日本語ロックの草分けと言われる細野晴臣や大瀧詠一の在籍したはっぴいえんども、最初は前述した岡林信康のバックバンドをつとめていた。
ドノヴァンというシンガー
ドノヴァンは、最初に書いたアメリカのフォーク・リバイバル・ブームに乗ってイギリスに登場したフォーク・シンガーである。
ギター1本にハーモニカ・ホルダーというその演奏スタイルから、イギリスのボブ・ディランとも呼ばれたらしい。
日本の社会派で硬派なフォーク・ファンの認識では、ドノヴァンといえば歌い方や歌詞が「軟弱」なイメージがあるらしいのだが、僕はこのシンガーの歌が好きで、よく聞いたり歌ったりしていた。
その中でも「catch the wind」という曲は特に好きな曲である。
Donovan & Crystal Gayle - Catch The Wind
新訳「Catch The Wind」
この歌は、女性への思いを歌う歌詞の最後に「それより風を捕まえようとする方がマシ(要するに、ムリ)」とつなげ、比喩的に相手に思いが届かないことを歌っている。
例によってこの歌を日本語で歌いたいと思ったが、歌に合う訳詞がなかった。
なので、ネットの和訳と辞書を駆使して、また自分でオリジナル訳詞を作った。
今回はそれを公開します(前置きが長くなってすみません)。
上の動画の音声を聴きながらでも、歌詞を追ってみて下さい。
「キャッチ・ザ・ウィンド」
心に底冷えがして 落ち着かないそんな時は
君のぬくもりに つつまれたい
いつだって君を感じて 手を取り合って砂浜を駆ける
なんて そよ風を手で 捕まえるような話
隠れてたいよ日暮れまで 君の笑顔のその後ろに
僕の目はいつも 君の目を見てる
君が好きで幸せで 僕は喜びの歌を歌う
なんて そよ風を手で 捕まえるような話
雨が別れに涙を飾る 側にいてよ励ましてよ
僕の憂鬱を 吹き飛ばしてよ
君の心の片隅に 僕の居場所を作りたかったんだ
なんて そよ風を手で 捕まえるような話
以上。