『橋下×羽鳥の番組』より、古館伊知郎との死闘が観たい。
玉木(tamakisei)です。
橋下徹がつまらない。
ぼくは、そんな橋下徹を見たいんじゃない。
橋下徹が引退会見を開いた2015年5月17日。
テレビの前にかじりついていたぼくは「ああ、この人は、テレビスターになる」と、強く予感した。
「笑顔で地獄見たら、もう勝ち」というのは、傷害事件の謹慎から明けた島田紳助に向けて、明石家さんまが言った言葉だが、
この時の橋下徹の笑顔には凄みがあった。
有吉弘行が十数年かけて見た地獄を、一夜にして見ているようだった。
橋下×羽鳥の視聴率がふるわないワケ
しかし!
どうですか、4月から始まった『橋下×羽鳥の番組』は!
ビートたけしのTVタックルを移動させて、鳴り物入りで始まった大型企画だというのに、バラエティとしてもニュースショーとしても、どうだろうか……というのが正直なところで、視聴率的にも苦戦しているとか。
何が問題なんでしょう。
ぼくなりに考えたのは、
・橋下徹は「中央」で輝く人じゃない。
・中央に置くのなら、横に並べるのは羽鳥アナじゃない。
ということです。
結論を先に言っておくと、ぼくは
・『橋下×羽鳥』が視聴率低迷で打ち切られた後、「フジテレビの深夜枠で指原莉乃と低俗なことをする番組」
か、
・「テレ朝のゴールデンタイムに古舘伊知郎と刺し合う番組」
が観たいです。
愛される毒舌
橋下徹に限らず、
テレビで「毒舌」という役割を担いながら人気者となる人には、その舌で引くほどの辛酸を舐めていてほしい。
視聴者はやっぱり、弱い立場にありながら権威や権力に反抗しているように見える人に共感するし、
周辺部にいた人たちが少しずつ中央(MC)に行くというプロセスがないと応援する気持ちになれない。
プライドがこっぱ微塵になって『内P』で裸になった有吉や、「ゲイで女装のデブ」として東京ローカルでメチャクチャな事を言っていたマツコなら、「口は悪いけど応援してやってもいい」と思う。
そういう傲慢さが、世間(というかぼく)にはあるように思うのです。
「周辺から中央への抵抗」こそが魅力
橋下徹は「橋本弁護士」だった頃から「ちょっと中心からずれたところで偉そうに(生意気に)振る舞う」芸風でした。
行列のできる法律相談所でもサンジャポでも、隅っこの方からあれこれ言うのが茶髪の風雲児の仕事だったわけです。
政治家に転身した後も地方から中央に噛みつき、
大マスコミや教育委員会のような「権力っぽい」ものを相手に戦っていました。
政治信条を脇に置けば、
朝日新聞の記者を「論破」したり、コメンテーターの大学教授を「フルボッコ」にしたりするのは痛快な見世物であったと思います。
しかし、それはあくまで地方から中央へというカウンターだったからであって、この構図がないと、少なくともテレビでは受けいれられにくいことでしょう。
そこんところを、『橋下×羽鳥』の討論企画は勘違いしているように思います。
キー局のスタジオのど真ん中に橋下徹を置いて、いちばん末席に座っている尾木ママや森永卓郎を「フルボッコ」にして、
「ほらほら『橋下無双』ですよ。皆さんこれが観たかったのでしょう」
とやられても、正直、つまらない。
のれんに腕おし、ぬかに釘。
橋下徹の破壊力が活かされているようで活かされていない。
大阪都構想の住民投票で、せっかくみじめに大敗を喫して、「テレビ的」には、これ以上にないくらいのハンデをもらったのに、これでは台無しです。
全国ネットのゴールデンのMCが、いち出演者を論破したところで、なんのドラマにもなりません。
橋下さんは、かなり損な椅子に座らされているんじゃないでしょうか。
こうなったら、早めに打ち切りになって、「すみません、調子乗ってました」と可愛げを見せて、フジテレビの深夜で指原莉乃と、スタッフに無茶振りされる低予算ロケとか暴論・暴露トークみたいな番組をした方がいいように思います。
(ベッキーや矢口真里の方が話題性はあるけど、現実的には指原さんがいいと思う)
橋下徹は中央では輝かない、と思うのです。
橋下徹と渡り合うバケモノ
中央で輝きたいのであれば、相手が羽鳥アナでは物足りない。
そう思うのですが、どうでしょう。
コロッセオの真ん中に橋下が立ち、闘技場の入り口から対戦相手が登場する。
どんな猛獣なら観客は興奮し、試合に熱中するだろうか。
テレビ自体の力が弱まったこの時代に、橋下徹と肩を並べるバケモノがいるだろうか。
います。
そのモンスターは、橋下徹が府知事へと転身する3年前に、同じく無謀な転身をし、賛否両論を巻き起こしました。
それまでは、天才的な話芸と型破りな発言で向かうところ敵なし。
しかし、転身後は、橋下徹と同じように幾度も苦渋を舐めました。
この10年間、政治的立場の違いから「敵対関係」にあった両者は、それぞれの戦場で敗北し、
そしてこの4月、バラエティの世界に返り咲きました。
古舘伊知郎。
当代随一の喋り手の10年は、橋下徹の10年によく似ています。
そして両者から漂う「この10年、ただでは終わらせない」という気迫も似ています。
この二人が、刺し違える覚悟で戦うのならば、ぼくは絶対に観たい。
毎週やるのが現実的でないのなら、特番でもいい。
橋下徹が、政治家の道を諦めているとは思えないので、刺し違えるメリットはないかもしれません。
でも、もし、負けるが勝ちのテレビの世界でトップを目指すのであれば、テレビ復帰後、「誰に負けてみせるか」というのはとても重要です。
古舘伊知郎ならば、相手にとって不足なし。
それは、古舘伊知郎から見ても同じです。
「キャスター」という足枷を取った古舘伊知郎が、政治言論から離れたバラエティという闘技場で、タレント・橋下徹とどんな死闘を繰り広げるのか。
どうしても観たいんです。
どなたか、なんとか、なりませんか。
取り急ぎ。