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飄々舎

京都で活動する創作集団・飄々舎のブログです。記事や作品を発表し、オススメの本、テレビ、舞台なども紹介していきます。メンバーはあかごひねひね、青木白、鯖ゼリー。

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【よまいでか】リクエスト大募集!

あかごひねひね おすすめ本紹介 読書 よまいでか

「よまいでか」とは、みなさんからリクエストを頂いた本について読書人間「かみしの」が書評のような感想のようなものを書いていく企画です。

そこで、かみしのに感想を書かせたい本を大募集!

この記事のコメント欄に著者名とタイトルをコメントして下さい!

無茶振り上等!

他にコメントなどもあれば是非!

 

なお、みなさんからのリクエストは全て下のアマゾン欲しいものリストに登録されます。ブログコメントの無茶振りはかみしの氏に拒否の自由がありますが、欲しいものリストを通じてギフトで送られた本は「必ず読まねばならない」というルールです。

 

一度覗いてみて下さい(こちらが購入するなどして既に手元にある本はこちらには表示されません)

www.amazon.co.jp

 

詳しくはこちらの記事で

 

hyohyosya.hatenablog.com

 

第六回よまいでか『邂逅の森』

おすすめ本紹介 かみしの よまいでか 小説 読書

こんにちは。

今年はどんな一年でしたか。あけましておめでとうございます。もうすぐ一月も終わりますね。なんて、いろいろな書き出しを考えていたのですが、ずるずるとさぼってしまって、そうとう久しぶりの更新になってしまいました。

エゴサすると「まい」という名前の人が「(呼び方は)まいでいいよ!」と親し気に送っているリプライばかり湧いて出てくることでおなじみのよまいでかも気づけば第6回。

 

今回は熊谷達也『邂逅の森』です。

 

邂逅の森 (文春文庫)

邂逅の森 (文春文庫)

 

 

本作は2004年第131回直木賞受賞の作品。直木賞といえばよまいでかの第一回『王妃の離婚』もまた直木賞受賞作品でした。

hyohyosya.hatenablog.com

ぼくは各所で口にしているように、どちらかといえば純文学と呼ばれる作品をよく読むので、直木賞にはあまり注目していなかったのですが、あの本がたいそう面白かったので最近は気にするようになりました。

ちなみに今回受賞した恩田陸の『蜜蜂と遠雷』は音楽好き必見らしく、読んだ人全員が絶賛しているので早く読みたいところです。

 

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

 

 

話は戻って、『邂逅の森』。実は同時に第17回山本周五郎賞も受賞しています。純文学界隈でいえば、芥川賞の他に三島由紀夫賞野間文芸新人賞という「三大文学賞」があるのですが、この山本周五郎賞もまた直木賞に匹敵するエンターテイメントの賞です。

二冠ともなれば期待も増大。ぼくはわくわくしながら読み始めました。

 

まずはあらすじです。

 

秋田の貧しい小作農に生まれた富治は、伝統のマタギを生業とし、獣を狩る喜びを知るが、地主の一人娘と恋に落ち、村を追われる。鉱山で働くものの山と狩猟への思いは断ち切れず、再びマタギとして生きる。失われつつある日本の風土を克明に描いて、直木賞山本周五郎賞を史上初めてダブル受賞した感動巨編。

 

マタギといえば頭に浮かぶのは獣の皮を羽織って、猟銃で熊を撃ち殺すぼんやりとしたあのイメージ。

熊といえばときおり出没して、人間を襲うことで有名な獣です。くまモンやプーさんでデフォルメされていますが、基本的には恐ろしい怪獣のような存在です。(ちなみに本当に熊を怪物として描いた漫画に『ザ・ワールド・イズ・マイン』というものがあります。ここにもやたらとかっこいいマタギのおじさんがでてきます)

 

 

この小説に描かれたマタギの文化はぼくが、そしておそらくみなさんが思っている以上に過酷で神聖なものでした。

 

獲物そのものがいないといったような、人間にはどうすることもできない状況を前にして、マタギたちは、何かの理由があって山の神様が獲物を授けてくれないのだと解釈する。

 

マタギとして山に入り、山の神様に守ってもらうためには、人間の性である欲深さを封じ込め、意識や感覚をできうる限り獣の領域まで近づけなくてはならない。そのための女断ちであり、水垢離であり、そして山歩きであるのだ。

 

マタギたちが相手にしているのは、シカや熊といった獣というよりは「山の神様」です。ここでの水垢離とは、チームで動くマタギたちの頭領の命令に逆らうなどルール違反をしたときに被る「罰」です。

また新人のマタギも「サンゾクダマリ」と称する、水垢離の通過儀礼を受けることになります。水垢離といえばまずお百度参りが頭をかすめますが、神道において水で体を清めるというのは、穢れを払うために行われる神聖な行いなのです。

あるシーンで山に登ったマタギが町を見下ろし、

 

「日本て、小っちぇえ国なんだな――」

「んだな、こごがらはぁ、何処さでもひと跨ぎだべ」

 

と会話する場面がありますが、ここなんかは天皇が行う「国見」にも似た趣があります。山に登り、市井を一望する。マタギたちは、自らを神域に挑ませているのです。

人間対自然。

獣対神。

強大なものに立ち向かうという緊張が文章に満ち満ちていて、ただ文字を読んでいるだけなのに自分も秋田の雪山で熊を待っているかのようなぴりぴりとした空気を感じます。

 

話の大筋は、主人公富治の成長物語です。

マタギとして「サンゾクダマリ」の洗礼を受け、夜這い(大正時代の話なので夜這いがあります)をかけた女・文枝との恋愛をします。

ただその相手がいけなかった。ある種お決まりのパターンですが、村の長者の娘を手にかけてしまった富治は、文枝父親によってマタギを辞めさせられ、鉱山へ左遷させられてしまいます。

前に『王妃の離婚』をレビューしたときにも書きましたが、ものすごい王道のストーリーです。

この小説の魅力を三点あげるとすれば、王道ストーリー、キャラクター、情景描写であるといえます。

話はこのあとひょんなことからマタギに戻った富治の結婚を経た、ラスボスとの闘いになります。

 

コブグマの全身から、人間に対する殺意が放たれていた。

 

このあたりの緊迫感は、思わず息が止まってしまうほどなので、必見です。

 

また魅力の一つであるキャラクターですが、富治をはじめ、インチキ商人、小心者の似非マタギ、職人気質の親方など数々登場しますが、何よりも女性が魅力的

富治が夜這いし、父親によって引き裂かれ他の男と世帯をもつことになった文枝。彼女は離れ離れになりながらも富治を想い続けます。

一方で、鉱山時代の弟子・小太郎の姉であり、幼少期に売られ男に抱かれることでしか生を実感できない女・イク。

いわば処女性と非処女性の両極を担う二人。

富治をめぐっていろいろな悶着(この辺りも王道でおおおおおっとなります)があるのですが、何しろ二人がかっこいい。

基本的に女のことに対しては優柔不断なところのある富治の尻を叩くように、凛としたふるまいで彼女たちは富治に向かいます。

 

とある場面で、文枝とイクが対面するのですが、ここはここで息の詰まる場面。熊に対し、神に対し戦いを挑む男の世界とは真逆の、人間と人間の戦いです。

熊谷さん、なにしろ文章が濃密なので読ませること読ませること。

魅力的な人間たちが、王道の物語に乗っかって、とんでもない推進力を生みだします。

富治最強の落とし文句、

 

「俺はクマ撃ちだすけ、鬼の一匹や二匹、なんぼでも撃ってやれるでな」

 

もどこで登場するか、お楽しみに。

 

これ、絶対漫画にしたら面白いよなあと思っていたらすでに漫画化されていました。

 

邂逅の森 新約マタギ伝 (1) ヤングチャンピオンコミックス

邂逅の森 新約マタギ伝 (1) ヤングチャンピオンコミックス

 

 

ページ数にして500ページ超なのでなかなか分厚いのですが、圧倒的なリーダビリティによってあっという間に読まされてしまいます。

直木賞の選考も参考に引用しておくと、

 

・力わざである。骨太の作品である。 阿刀田高

マタギの富治の生き方をまっとうに、一途に書いて、この作品にかけた作者の気迫が伝わってくる。 渡辺淳一

骨太だが無器用で、新しさなどはどこにもない。それでも、心を打つ物語の力があった。 北方謙三

・久しぶりに骨太の作品を読んだと思った 平岩弓枝

 

とにかく腰のすわった筆致に、審査員たちも絶賛を送っています。

喰うか喰われるかの命を賭した戦いを繰り広げる男たちの中でも、鉱山時代の弟子にして、のちのマタギ・小太郎はやや腰の引けた人物。

 

「俺ぁ、ガキのころに村を逃げ出してから、肝心なところでは逃げてばっかりだ。でもよ、兄貴、逃げ足だってとことん磨いてやればよ、閻魔様からだって逃げられるってことも、あるんじゃねえかな」

 

でも、考えてみればマタギたちが異常なわけで、どうしても小太郎に感情移入しながら読んでしまいました。

折も折、『羆嵐』を読んでいたぼくにとって、恐ろしい怪物を狩ってくれる英雄にして、厳しい文化の保持者、そして神にも近き人間であるマタギの織り成す物語は、極上の時間を提供してくれました。

 

羆嵐 (新潮文庫)

羆嵐 (新潮文庫)

 

 

読み終わったときにぼくの口から漏れ出たのは、「これぞ小説!」でした。

何でもいい。とにかく面白いエンタメが読みたい、と思ったら迷わず『邂逅の森』を手に取ってください。

 

面白くなかったら水垢離してyoutubeに挙げるので、一報ください。

 

この本をレビューしてください!!!というものがあれば、以下の記事にコメントするか、ぼくのアカウント(@KamisinOkkk)までDMやリプライください。

hyohyosya.hatenablog.com

 

純分、エンタメ、SF、ホラー、聖書、エッセイ、古典、なんでもOKです。

どしどしリクエストください。

劇場で107本観た2016年 ベスト映画10選

イトウモ 映画
イトウモの2016映画ベスト10

レッドタートル ある島の物語

1 ホース・マネーペドロ・コスタ

2 サウルの息子ネメシュ・ラースロー

3 聖杯たちの騎士テレンス・マリック

4 人生は小説よりも奇なり/アイラ・サックス

5 レッドタートル ある島の物語マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

6 傷物語 I 鉄血篇/新房照之、尾石達也

7 光りの墓/アピチャッポン・ウイーラセータクン

8 ピートと秘密の友達/デヴィッド・ロウリー

9 エージェント・ウルトラ/ニマ・ヌリザデ

10 ちはやふる-上の句-小泉徳宏

 

 1位の『ホース・マネー』は東京と名古屋で計2回鑑賞。6月に東京造形大で開かれたペドロ・コスタ(※1)のトークショーにも足を運んだ。そこで取ったメモを年末に見返そうと思ったら、結局なくしてしまっていたのだけど、講演の中でコスタ監督は確か、通訳を通じて、「私は、頭の中で想像したストーリーというものに興味がない。目の前にあるものに興味がある」というようなことを話していた。

※1 ペドロ・コスタ(1959〜)ポルトガルの映画監督。リスボン生。代表作に『(1989)』『(1997)』『ヴァンダの部屋(2000)』など。2002年、カンヌ映画祭でフランス文化賞受賞。2010年から東京造形大客員教授

 

 『ペドロ・コスタ 遠い部屋からの声(2007)』に掲載されていたインタビューの中でコスタがデヴィッド・リンチ(※2)のことを「自分の半径5メートル以内にしか興味がない」作家と腐していた。コスタはリンチのように空想の世界で個人的な作品を作る作家、「頭の中で想像したストーリー」を操る作家ではない。コスタの作品はほとんどすべてがドキュメンタリーだ。

※2 デヴィッド・リンチ(1946〜)アメリカ合衆国の映画監督、画家、作曲家。代表作に『ブルーベルベット(1984)』『マルホランド・ドライブ(2003)』など。「カルトの帝王」の異名をとり、古典的なサスペンス映画の話法と独自の視覚、聴覚演出で知られる。 

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  それで、今年公開された新作『ホース・マネー』がまるでリンチの『インランド・エンパイア(※3)のような作品だったことにとても驚いた。こうした感想は、きっとコスタ監督のまったく意図しないものであるとも思う。

※3 『インランド・エンパイア』(2007)ハリウッドに住む女優ニッキー・グレイスは自宅を訪問してきた老婆からポーランド映画『暗い明日の空の上で』の出演を依頼される。ニッキーは出演を承諾し、映画の撮影が始まるが、彼女の実生活を映画、そして原作の『暗い明日の空の下で』の世界は入り混じり始める。現実と虚構の見分けがつかなくなり、夢の中で複数のエピソードを行き来するような映像が展開される。やがて、元のポーランド映画の撮影中に出演俳優が亡くなっていたことが明らかになる。プロットが複雑な混乱を極めた末、映画はニッキーに出演を依頼した老婆がポーランド映画に出演した女優であるかのように示唆し、老婆の亡霊が成仏するかのように映画は突然、終わる。

 『ホース・マネー』にはヴェントゥーラという50代の男が出てくる。彼は旧ポルトガル領、北アフリカカーボ・ヴェルデから移り住んだ労働者で、リスボン郊外のフォンタイーニャスという地区に、彼と同じようなたくさんの移民たちと一緒に暮らしている。結婚し、この街の工場で働き、サラザール独裁政権の崩壊とチューリップ革命を経験し、病気にかかって今にも亡くなろうとしている。

 しかし、コスタはヴェントゥーラの立場に寄り添うことも、歴史を説明することもしない。日本の東京や名古屋の映画館にはいないヴェントゥーラという人物をその場に出現させるための装置として映画は使われる。それは霊媒のようなものに見える。

 映画を見て気付かされる。初めて会う人と会って話すとき、自分はその人が何であるかにあまりにも左右されている。その人が男なのか、女なのか、いくつなのか、どこで生まれてどこに住んでいるのか、職業は何か。でも実際には、それ以前に人間もまた一つの物質であり、骨の周りに肉がついて髪の毛や歯が生えている。語るより前にただ、喉が震えて意味のない音が出る。この映画は、そんなふうに物質としての人間をその場に再現してしまう。本当にそんなことができるのか、思うしれないけれど、それは見てほしい。そして、その人は、私たちが初めて会ったその人が、自分に今まであったことを語る。まるで自分の役を演じる俳優のように話す。それは、リンチの映画『インランド・エンパイア』の夢から夢へと跳び移るような体験とよく似ている。唯一ちがうのは、コスタの方の内容は全て事実だということだ。二人は映画を持った霊媒師に違いなかった。

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 アピチャートポン(※4)の新作『光りの墓』もまた映画を使って、実際にはその場にないものを呼び込もうとする。タイ東北部のある病院で男たちは謎の「眠り病」におかされ、突然意識を失ってしまう。元々はある王の墓だった病院の土地。その地下では王の兵士が戦争を続けており、戦争のために男たちは生気を吸い取られる。食事中にばたんと倒れる男の劇的なショットから、眠り続ける男が並ぶベッドを写すだけのこちらも眠りそうになるシークエンス。決してアニメーションが地下で繰り広げられる王族の戦いが描くというようなことはない。カメラはありふれたものを凝視する。ネオンの点滅、無人のエスカレーター、回り続ける天井のファン。そこになにかの気配を見ようとする。

※4 アピチャートポン・ウイーラセータクン(1970〜)タイの映画監督、美術家。チェンマイを拠点に映画や美術、写真の政策を行う。2010年に『ブンミおじさんの森』でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。代表作に『トロピカル・マラディ(2004)』『世紀の光(2006)』など

 

 一番楽しい時間が映画館を出た後にやってくる。街灯、通りの向こうを車が走る音、信号機の点滅、車のヘッドライト、見知らぬ建物の窓に覗く室内灯。すべてなにかの暗示ではないかと錯覚する。自分の知覚が別のなにかに拡張されてしまったのを感じながら家路につく。

 7月、アッバス・キアロスタミ(※5)が亡くなった。それで、年末には特集上映でキアロスタミの監督作品を映画館で見ることができた。1997年のカンヌ映画祭パルムドール受賞作『桜桃の味』にも同様の、街中を散歩するときのような瞑想があった。映像メディアがストーリーやテーマを伝えるのではなく、知覚の体験に変わるための方法の一つが瞑想だと思った。主人公の男は自分の自殺を手伝ってくれる者を探して車で郊外の工事現場を彷徨い続ける。鷲鼻、撫でつけられた白髪、太い眉の被さった虚ろな瞳。カメラは男の顔を映し、今度は運転席からフロントガラス越しの景色を移す。カメラは何度も切り返す。そうすると、まるで車を自分で運転しているみたいに錯覚する。彼がなぜ自殺を望むかについて、説明は一切ない。

※5 アッバス・キアロスタミ(1940〜2016)イランを代表する映画監督。代表作に『友だちのうちはどこ?』『クローズ・アップ 』日本で撮影した『ライク・サムワン・イン・ラブ』など。2016年7月にガン療養中のパリで亡くなった。76歳没。

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  彼は次々と自殺幇助の依頼を断られる。最後に彼が出会った美術館で働く剥製技師の男が「人生は列車。放っておけば目的地に着く。途中で飛び降りてはいけない」と語る。ただ男はレンジローバーに乗っている。彼は自分で車を止めることができる。桑の木の近くに車を止めると、根元に穴を掘って中に寝転がる。剥製技師の男は、寝転がった彼に土をかけるように約束をしてくれた。日が落ちる。彼の体に土がかけられる。技師はまた次の日の朝にやってくることになっている。土を被った男に石を投げるために。彼が生きていて、目覚めてくるのを確かめるために。

 画面は暗転し、朝になる。監督のキアロスタミがエキストラにランニングをやめるように告げて、主演の自殺志願の俳優がカメラの前を横切っていく。撮影は終了し、すべては映画の嘘でした、となる。

 映画が死を描けないという問題について、ゴダールは『映画史(※6)の中で映画史がホロコーストを撮り損ねたという話を何度もする。クロード・ランズマンが『ショアー(※7)を作ったことは、直接ホロコーストが撮れないことを一層強調していると。

※6 『ゴダール 映画史(1988)』全8章からなるフランスのビデオ映画シリーズ。

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 ※7 『ショアー(1985)』クロード・ランズマン監督。全編約9時間30分から。当時のポーランドの住人やナチスの親衛隊などアウシュビッツ-ビルケナウ収容所の当事者インタビューを集めたドキュメンタリー。

 ヨーロッパに住んだこともないので、ホロコーストの問題を真剣に、自身に直接関わる問題として考えることは難しい。ただ西洋の映画にはそのテーマがよく登場する。そのとき、ただ、屍体をカメラに映すことは実際にはわざとらしいことなのかもしれない、と想像する。人が倒れている。それを映す。これは屍体、ということにする。映画館に来る人はそれがフィクションだと知っている。考える。どうすれば、本物の屍体だと思ってもらえるか。あるいはどうすれば、もっと怖い映画が作れるか。人がそこで死んでいる、とどれだけ真剣に表せるか。

サウルの息子 [DVD]

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  ネメシュ・ラースローの『サウルの息子』、舞台は1944年10月のアウシュビッツ-ビルケナウ収容所。画面の大半を終始、サウルという男の後頭部が覆い続けることだ。その機能は二つある。一つは観客に映画を鑑賞以上に体感させること、もう一つは描けないものとして画面を隠すこと。

 サウルはゾンダーコマンドというナチスに協力して同胞をガス室に送り込み、自らも後々殺される役職を負ったユダヤ人。ガス室の中に残された屍体に山にまだ息のある若い男性を見つける。彼はサウルの息子だった。息子は間も無く息をひきとる。彼は息子を葬るために、職務を離れて収容所雨の中にユダヤ教の聖職者ラビを探す。

 『サウルの息子』は終始、シューティングゲームの操作画面のような構図。しばらく見ていると、他人が運転する車の助手席に座るように不自由な画面にだんだんと息苦しくなってくる。サウルはあちこちに移動する。部屋から部屋へ。建物から建物へ。人混みをかき分け、火事に紛れて収容所を抜け出し、川を泳いで走って森に逃れる。自分で操縦できない乗り物に乗っているような不自由さも感じる。しかし、後半、火を映し、水を映し、カメラごと駆け回る。歴史上の事件が体験型のアクション映画になったことを嬉しく思った。観客はサウルの後頭部を凝視することで、サウルになる。黒塗りの余白になった画面中央の後頭部を使って、その向こう側でサウルが見ているものを想像する。ここで語られる歴史は私たちの頭の中でだけ体験される。『サウルの息子』は映画を体験に変えること、歴史上の出来事を体験に変えること、そして直接表してしまっては意味が損なわれてしまうものを語ることについて優れている映画だと思った。

イトウモ

1 ホース・マネーペドロ・コスタ

2 サウルの息子ネメシュ・ラースロー

3 聖杯たちの騎士テレンス・マリック

4 人生は小説よりも奇なり/アイラ・サックス

5 レッドタートル ある島の物語マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット

6 傷物語 I 鉄血篇/新房照之、尾石達也

7 光りの墓/アピチャッポン・ウイーラセータクン

8 ピートと秘密の友達/デヴィッド・ロウリー

9 エージェント・ウルトラ/ニマ・ヌリザデ

10 ちはやふる-上の句-小泉徳宏

 

 


2016年に読んだ本 オススメ10選

あかごひねひね おすすめ本紹介

こんにちは、あかごひねひねです。

年末になると様々な2016年ベストをいろいろな人が発表します。流行語やら映画やらゲームやらツイートやら。

僕も何か2016年ベストを発表したいと思ったのですが、流行には疎く、映画はあまり見ず、ゲームはスプラトゥーンを一年ずっと遊び倒し、ツイートは気に入ってもいいねしないので記録に残っておらず、といった具合。

そこで、いつものことで芸がないですが、今年読んだ本の中でベスト10選を発表したいと思います。

 

その1『モナドの領域』

 

モナドの領域

モナドの領域

 

 

1作目は「筒井康隆最後の長編にして最高傑作」との宣伝文句で売られていたこちら。いちおう小説ですが、途中で主人公GODが世界観を他の登場人物に説明する部分が割と長いです。

しかし、それでもスラスラと読ませてしまうのが筒井康隆の実力。具体的な作品の内容はあえて書きませんが、僕もはかなり楽しく読みました。個人的には、普段からわざと小難しいことを考えては哲学者ぶって悦に入ってる偏差値55くらいで20歳前後の痛い文系の人(僕のような)に読んでいただきたい。多分いい感じに気持ちいいはず。

 

その2『折れた竜骨』

 

折れた竜骨 上 (創元推理文庫)

折れた竜骨 上 (創元推理文庫)

 

 

 

折れた竜骨 下 (創元推理文庫)

折れた竜骨 下 (創元推理文庫)

 

 

2作目は米澤穂信『折れた竜骨』。筆者の米澤穂信は青春本格ミステリの「古典部シリーズ」や「小市民シリーズ」などの作者で、若い世代の支持が厚いミステリ作家です。それもそのはずで、この人はデビュー以前はネット上で自作の小説を公開していた上に、出身はラノベ畑という、なんとも今風?なミステリ作家さんなのです。角川のラノベルーベルのミステリ限定の新人賞を、古典部シリーズ第一作の『氷菓』が取り、それが作家デビューとなりました。しかしその後、そのミステリラノベのレーベルそのものが不振になって廃止され、現在古典部シリーズは普通の角川文庫から出ています。

『折れた竜骨』は、そんな筆者の特徴が特に色濃く出た作品です。舞台は中世のイギリスで本格ミステリなのですが、なんと魔術や呪術の存在と効果がこの小説内では肯定されています。いわゆるゲームやラノベでいう「剣と魔法の世界」に近い世界観で本格ミステリを成立させている。とんでもない作品です。登場人物も「サラセン人」やら「ザクセン人」やら「呪われたデーン人」やらかなり心踊る響き。世界史の好きな人は特に楽しめるかもしれません。

 

古典部シリーズ、小市民シリーズ↓

氷菓 (角川文庫)

春期限定いちごタルト事件 小市民シリーズ (創元推理文庫)

 

その3『いまさら翼と言われても』

 

いまさら翼といわれても

いまさら翼といわれても

 

 

米澤穂信の作品をもう一作。これはつい先日出たところの古典部シリーズの最新作です。アニメにもなり、近々映画にもなるらしい古典部シリーズ。まだ読んでない人は一読をお勧めします。

 

※アニメ『氷菓Blu-ray

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その4『夏のルール』

 

夏のルール

夏のルール

 

 

ここでいきなり絵本を紹介します。僕が2016年でもっともショックを受けた本かもしれません。幼い2人の兄弟の周りで全く説明なく展開される独特の世界観の一枚絵と、それに対応する「〜しなければいけない・してはいけない」という一文のルールが見開き1ページに書かれるスタイルが最後まで続く絵本。ストーリーらしきものはありますが、それについても全く説明はありません。絵と世界観がとにかく素敵。ネットの画像検索でもいくつかの絵は出ますので、見てみてください。超オススメです。

 

その5『ランボー怒りの改新』

 

ランボー怒りの改新 (星海社FICTIONS)

ランボー怒りの改新 (星海社FICTIONS)

 

 

えっと、これは奈良をテーマにした短編集です。説明の代わりに表題作「ランボー怒りの改新」から一文を引用したいと思います。

"推古天皇の御代、トンキン湾事件をきっかけにして蘇我馬子が火蓋を切ったベトナム戦争は泥沼化し、馬子が世を去ってその息子蝦夷の代になっても終息の兆しを見せていなかった。"

以上です。こんな内容です。読んでみて、としか言えません。

 

その6『ざんねんないきもの事典』

 

おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典

おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典

 

 

様々ないきもののざんねんな習性や特徴が、可愛いイラストとともに説明されている本です。子供向けかと思いきや、大人が読んでも十分面白い。可愛い動物のイラストが好きな人には特にオススメ。字ばかりの本は肩がこりますし、たまにはこういう本でほっこりするのも良いですよ。

 

その7『星を継ぐもの』

 

星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

 

 

SFオールタイムベストのアンケートなどで必ず上位に来る作品。表紙は宇宙服の人間ですが、物語のほとんどのパートは地球が舞台です。派手なアクションやスリルやサスペンスはなく、宇宙での発見→検証→仮説→新発見→検証→仮説を繰り返していく中で、最初に提示された巨大な謎が徐々に解明されていきます。その論理展開がめちゃくちゃ面白く、一気に読んでしまいます。SFというとスターウォーズバック・トゥ・ザ・フューチャーのような宇宙や未来を舞台にした派手なドラマをイメージしがちですが、この本はむしろ上質なミステリに近い印象です。とにかく超オススメ。

 

※続編↓

ガニメデの優しい巨人 (創元SF文庫)

巨人たちの星 (創元SF文庫)

 

その8『銀河ヒッチハイク・ガイド

 

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

 

 

SFをもう一作。イギリスの作家アダムズが書いた、有名なコメディSF『銀河ヒッチハイク・ガイド』です。元はイギリスで大人気を博したラジオドラマで、それを脚本家が自らノベライズしたのがこの作品のようです。と、いってもラジオドラマより小説としての方が有名な印象があります。内容はとっちらかってて荒唐無稽なので、あまり説明するしても意味がない気がします。けっこう前に映画にもなっており、そちらもオススメ。あと、本か映画を観た後に必ずグーグルで「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」を検索してください。

 

※続編↓

ほとんど無害 (河出文庫)

宇宙の果てのレストラン (河出文庫)

宇宙クリケット大戦争 (河出文庫)

 

その9『異世界居酒屋のぶ』

 

異世界居酒屋「のぶ」

異世界居酒屋「のぶ」

 

 

ネット上の小説サイト「小説家になろう」に連載されていた異世界ものの小説。異世界のある国の路地裏と現代日本の居酒屋の店先がなぜか繋がっていて、王宮の兵士や貴族、王族、商人ギルドの頭目などが料理を食べては舌鼓を打つ、というお話。

読んでるうちに確実に居酒屋に行きたくなりますが、居酒屋なので実際に行けるのがうれしいところ(フランス料理とかはこうはいかない)。まだ小説家になろうのサイトで閲覧可能なので、まずはそちらで読んでみてもよいかも。書籍版は少し改稿されていて、書き下ろしエピソードも増えていますが、まあ8割はネットで読める内容と同じです。

 

その10『まさかジープで来るとは』

 

 

芥川賞作家、又吉直樹の『火花』、ではなくこちらをオススメ。ピースの又吉と作家のせきしろの作った自由律俳句(と、一部短文)がずーっと書いてあるだけの本。切れ切れのセンスが凝縮された一文が立て続けに書かれているので、どんなスピードで読んだらよいのか分からなくなります。いくつか紹介すると、

 

"魚はこっちを見ていない" せきしろ

"他の場所で会うと小さい大家" 又吉

"走らなくても間に合ったんじゃないか" せきしろ

"鍋沸騰しろ会話がない" 又吉

 

など、一行で少し滑稽な情景が目に浮かぶ自由律俳句が大量に収録されています。読んだら確実に自分でも作ってみたくなること請け合い。

ただ、実はこれはシリーズ第二集なので、その辺の順番にこだわる人は第一集のカキフライが無いなら来なかった (幻冬舎文庫) から読むと良いかと思います。カキフライ〜は去年に読んだのでこの10選には載せられなかったのですが、正直どっちから読んでも同じです。

 

以上、僕が今年読んだ本の中からオススメを10作、選んでみました。何かの参考になれば、と思います。

 

それではみなさん、良いお年を。

 

 

【速報】水曜どうでしょう新作は、いつどこに?行き先を、藤やんうれしーが発表!

水曜どうでしょう 青木白

玉木(@tamakisei)です。

 

昨日、『水曜どうでしょう』のミスターこと鈴井貴之さんが、

こんなつぶやきをして話題になっています。

 

 

水曜どうでしょう3年ぶりの新作か??と

水曜どうでしょう 新作撮影か | 2016/12/13(火) 9:29 - Yahoo!ニュース

 

ヤフーニュースにもなる始末。

 

そして今日のLINE LIVEで、

新作DVD予約前の恒例配信『腹を割って話そう』で、

爆弾発表がありました。

水曜どうでしょうDVD第25弾「5周年記念特別企画 札幌?博多 3夜連続深夜バスだけの旅/試験に出るどうでしょう 日本史」

 

 

 

配信終了!

 

となった後、コメントが止まらないのを見て予告なしに配信を再開。

大泉洋さんが一番新作を待っているという話をして配信を今度こそ終了。

 

そして再び配信を開始して…

 

「もう誰も見てないでしょう」と藤村さん。

(この時点で8000人以上見ていたのですが)

 

「次のどうでしょう、南極です」

 

 

ええええええええええ!

と、思ったら、

 

「それは冗談で…」

冗談か。

 

「南半球いきます!」

「範囲が広い!」と嬉野さん。

 

でも、これが本当だったら、

(「やっぱやめました」も十分にあるので)

 

そうとう重要ニュースだなあ。と。

 

「範囲広くてニュースにもならんでしょう」

 

とおっしゃってましたが、これでそうとう予想の範囲狭まりましたよね。

 

なーんて言いつつ

「スペインで牛追いだ!」とあんだけ言っといて

「西表で虫追いだ!」と裏切ってくださることを期待!!!

 

同じ(どう)バカなら、踊らされなきゃ損、損!

 

撮影が来年で放送が年末とかかしら。

死ねない理由が増えました。

 

取り急ぎ。

 

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