飄々舎

京都で活動する創作集団・飄々舎のブログです。記事や作品を発表し、オススメの本、テレビ、舞台なども紹介していきます。メンバーはあかごひねひね、鯖ゼリー、玉木青、ひつじのあゆみ。

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飄々動画コレクション

 

 

 

今までの飄々舎関連の動画をまとめてみました。意外とある。

クソディベート

その①2017年5月の10回目のライヴより

出演:あかごひねひね,玉木青,ひつじのあゆみ

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その➁2016年5月の6回目のライブより(なので時系列的にはこっちのほうが早い)

出演:あかごひねひね,玉木青,ひつじのあゆみ

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世界観大喜利&悪口

2016年の年始に録音。

出演:あかごひねひね,玉木青(青木白)

 

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ひつあかラジオ①~➇

飄々舎参加前のひつじのあゆみとあかごひねひねによるラジオ

出演:ひつじのあゆみ,あかごひねひね

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The 3分

フリートークを無理やり3分ごとに切るという新企画。編集が苦しく、中断。

出演:あかごひねひね,玉木青

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あかラジ1~7

飄々舎結成前に録音。あかごひねひねのフォロワー数が1600人だった頃

出演:あかごひねひね,玉木青

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【よまいでか】リクエスト大募集!

「よまいでか」とは、みなさんからリクエストを頂いた本について読書人間「かみしの」が書評のような感想のようなものを書いていく企画です。

そこで、かみしのに感想を書かせたい本を大募集!

この記事のコメント欄に著者名とタイトルをコメントして下さい!

無茶振り上等!

他にコメントなどもあれば是非!

 

なお、みなさんからのリクエストは全て下のアマゾン欲しいものリストに登録されます。ブログコメントの無茶振りはかみしの氏に拒否の自由がありますが、欲しいものリストを通じてギフトで送られた本は「必ず読まねばならない」というルールです。

 

一度覗いてみて下さい(こちらが購入するなどして既に手元にある本はこちらには表示されません)

www.amazon.co.jp

 

詳しくはこちらの記事で

 

hyohyosya.hatenablog.com

 

死にゆくアップル社に向けて書かれた鎮魂歌『アップル ―世界を変えた天才たちの20年―』

あかごひねひねです。

今さっき読み終わった本が面白かったので少し感想を書きます。

 

『アップル ―世界を変えた天才たちの20年―』という本なんですけど。

 

アップル〈上〉―世界を変えた天才たちの20年

アップル〈上〉―世界を変えた天才たちの20年

 

 

アップル〈下〉―世界を変えた天才たちの20年

アップル〈下〉―世界を変えた天才たちの20年

 

 

アップルってのはもちろんあのApple社。iPhoneとかマックブックとかで有名なコンピューター会社のことです。この本はそのアップル社の創業から、出版当時の1998年までを膨大な記録やインタビューをもとに振り返るノンフィクションです。 

もともとこの本は父親の書斎で発見されて、引っ越しの時に僕がもらったものです。うちの父親は90年代からのアップルユーザーで、当時アップルのロゴのTシャツを部屋着にしてたような人(僕は十年以上してからそれがどうやら異常なことであったと気づきました)なので、こんな本を持っていたのだと思います。

この本の何が面白いかって、アップル社がスティーブ・ジョブズのもとでiMaciPodiPhoneなどを開発し大成功を収める直前に書かれているんです。

現在、スティーブ・ジョブズに関しては伝記映画や名言集なんかも出版されてて、あと「ジョブズ流のプレゼン術」みたいな本も出てます。でもなんかこういう本ってちょっと胡散臭いというか、いかにも意識高い系の人が読んでそうでなんとなく敬遠しちゃうんですよね。

その点、この本は違います。何といってもジョブズがほとんど出てきません。具体的には371ページある(上)の36ページでジョブズは追放され、(下)の後半240ページから324ページに出てくるのみです。700ページほどある全体で、ジョブズが出てくるのは合計100ページちょっとです。アップル社の社史なのに。

しかし、それはある意味当然で、この本が出版されたのが1998年。ジョブズは1985年にアップル社を追い出され、戻って来たのは1997年です。しかも、数字だけを見ると、実はジョブズが追い出されてからアップルという会社の規模は10倍くらいに膨れ上がっているんです。

つまり、この本が出版された当時、ジョブズの位置づけは「つい最近、10年以上ぶりに死にかけのアップル社の経営に戻って来た、かつてアップルが今より小さくて勢いがあった頃のカリスマ創業者」に過ぎないというわけです。

では、この本は残りの600ページで主に何を書いているのかというと、ひたすらにアップル社内の権力闘争のグダグダと、アップルが犯した間違いを描き続けるのです。アップルはジョブズが追い出されてから、トップだけでもジョン・スカリー、マイケル・スピンドラー、ギル・アメリオと三人も変わっていますし、それ以外の経営陣も入れると本書には膨大な数の登場人物が入り乱れています。

もうこれがひどいのなんの。かなり批判的に書かれているせいもあるのですが、経営陣のキャラが全員めっちゃ濃くて、その中で誰かを裏切ったり、立場を守るために現場からの提案を却下したりを繰り返すんです。

もちろん、ただ経営陣の内輪もめだけを書くわけではなく、その当時のパソコン業界とアップル社を取り巻く状況や、それに対する対策、結実しなかった様々なプロジェクトなどを事細かに描いていますし、その時代の記憶がほとんどない僕の世代にとってはすごく勉強になります。

で、これは完全な想像なんですけど、2000年以降に似たような本が書かれたら(多分書かれてると思うのですが)、こんな内容には絶対になってないと思うんですよ。

アップルが成功すると分かっている未来からアップル社の社史を描けば、きっと様々なところに「その後の成功につながる何か」を見つけるような内容になるでしょう。しかし、この本は違います。先ほど書いたようにこの本が出版される当時のアップルはどん底で、ジョブズが復活してようやく首をもたげたくらいの状態でした。

具体的には、かつて40ドルで取引されていたアップルの株価は本の終盤では13ドルくらいまで下落しています。そしてジョブズが来て改革が始まって、その期待感から一次的に30ドルくらいまで持ち直したところで、本書は終わっています。

つまり、この本はアップル成功の秘訣というよりは、「パソコン業界であんなに輝いていていた一番星、アップルはどうしてこんなになってしまったのか」という、失敗の振り返りとして書かれているのです。だからこそ経営陣にいざこざや、潰されて日の目を見なかった数多のプロジェクトについてこんなに細かく書かれているのです。

この本の著者ジム・カールトン(ウォールストリート・ジャーナルの記者)は、本の最後でジョブズの復帰直後の様々な改革について評価しつつも、こう書いています。

スティーブ・ジョブズなら(アップルを凋落から救済)できるかもしれない。だが確率からいって、彼にできることはせいぜい落下速度を緩めてアップルをおそらくあと数年生き長らえさせることであり、やがてより大きな企業に呑み込まれるかついに顧客が誰もいなくなるのではなかろうか。

もう、完全にお葬式モードです。

この本は、アップルという会社が本当に瀕死だった時に書かれた、ある意味鎮魂歌のようなものに思えます。

そして、かつて輝いていた企業がマジでもうすぐ死ぬと思っている人が書く文章は、その企業が生き返った後に再現することはできません。

今、アップル関連の書籍やスティーブ・ジョブズの映画を観ても味わえないアップルという会社に対する「ほんとうにどうしようもねえ」という感じがこの本からはひしひしと伝わってきます。

「カリスマのジョブズ」「おしゃれで素敵なアップル」のイメージが浸透し、スターバックスコーヒーにやたらとマックブックエアを持ち込んで仕事をする人が増えている今こそ、どうしようもない死にゆくアップルに捧げられたかつての鎮魂歌をもう一度聞き直すのもまた一興ではないでしょうか。

 

アップル〈上〉―世界を変えた天才たちの20年

アップル〈上〉―世界を変えた天才たちの20年

 

 

アップル〈下〉―世界を変えた天才たちの20年

アップル〈下〉―世界を変えた天才たちの20年

 

 

かばんさんを待ちながら➆

初回&前回記事はこちら↓

 

hyohyosya.hatenablog.com

hyohyosya.hatenablog.com

 

かばんさんを待ちながら➆

アライさん、立ち止まる。フェネックとアライさん、声の方を見る。

 

アライさん「また始まったのだ」

フェネック「こっちにおいでよー」

 

草むらからサーバルがびくびくしながら出てくる。

 

サーバル「ミライさんは?」

フェネック「わたしだよー」

アライさん「何の用なのだ?」

フェネック「もっとこっちにおいでよー」

 

サーバル、動かない。

 

アライさん「こっちに来るのだ!」

 

サーバル、びくびくしながら近寄り、立ち止まる。

 

フェネック「いったい何なのさー?」

サーバル「かばんちゃんが……(黙る)」

フェネック「そんなことだと思ったよー。こっちへおいでー」

 

サーバル、動かない。

 

アライさん「こっちへ来るのだ!」

 

サーバル、びくびくと前に出て、止まる。

 

アライさん「どうして、こんなに遅くなったのだ?」

フェネック「かばんさんからの伝言があるのかいー?」

サーバル「そうなんだ!」

フェネック「そうか。言ってごらんよー」

アライさん「どうして遅くなったのだ?」

 

サーバル、二人をかわるがわる見る。どちらに返事していいか分からない。

 

フェネック「アライさーん、そんなにガミガミ言っちゃだめだよー」

アライさん「フェネックは黙ってるのだ!今何時かわかってるのか?」

サーバル「でも、わたしのせいじゃないよ!」

アライさん「じゃあアライさんのせいなのか?」

サーバル「怖かったんだよ」

アライさん「怖いって、何が怖いのだ?アライさんたちか?セルリアンか?……何か答えるのだ!」

フェネック「分かってる。怖がらせたのはあの連中だよー」

アライさん「いつからここにいるのだ?」

サーバル「ちょっと前からだよ」

フェネック「鞭が怖かったんだねー」

サーバル「うん」

フェネック「叫び声がー?」

サーバル「うん」

フェネック「あの三匹のフレンズがー?」

サーバル「うん」

フェネック「あのフレンズ、知ってるかいー?」

サーバル「知らないや」

フェネック「君は、このあたりがナワバリなのー?」

サーバル「うん」

アライさん「みんなうそっぱちなのだ!本当のことを言ーうーのーだー!(サーバルの手をゆすりながら)」

サーバル「全部本当のことだよ!」

フェネック「いいからそっとしといてあげなよー。アライさんちょっと変だよー?」

 

アライさん、サーバルから手を離すと、両手で顔をおおう。

フェネックサーバルはそれを見つめる。

アライさん、ゆがんだ顔を見せる。

 

フェネック「どうしたのさー」

アライさん「アライさんは不幸なのだ」

フェネック「なに言ってるんだよアライさんーそれはいつからだいー?」

アライさん「忘れたのだ」

フェネック「記憶っていうのは本当にあてにならないからねー……。それで?」

サーバル「かばんちゃんが……」

フェネック「君は会ったことがあるのー?」

サーバル「わたし、わかんないや」

フェネック「わたしのこと、知らないー?」

サーバル「うん」

フェネック「きのう、来たんじゃないかいー?」

サーバル「来てないよ」

フェネック「ここへ来たのは初めてかいー?」

サーバル「そうだよ」

 

沈黙

 

フェネック「誰でも一度はそう言うけどねー。じゃあ、続きを聞こうかー」

サーバル「えっとね、かばんちゃんがね、今晩は来られないけど、明日はかならず行くからって言うようにって」

フェネック「それだけかいー?」

サーバル「うん」

フェネック「君はかばんさんといっしょに旅をしてるのー?」

サーバル「うん」

フェネック「普段は何をしてるんだいー?」

サーバル「狩りごっことか」

フェネック「かばんさんは君には優しいかいー?」

サーバル「うん!」

フェネック「いじわるしたりしないのかいー?」

サーバル「うん。わたしにはしないよ」

フェネック「じゃあ、誰にいじわるするんだいー?」

サーバル「ほかのフレンズとか」

フェネック「へえ!ほかのフレンズもいるのかい?」

サーバル「うん」

フェネック「他のフレンズは普段何してるんだいー?」

サーバル「狩りごっことか」

フェネック「どうして君にはいじわるしないんだろー?」

サーバル「わかんないや」

フェネック「きっと君が好きなんだよー」

サーバル「わかんないや」

フェネック「ジャパリまんはたくさんくれるかいー?」

サーバル「えっと……」

フェネック「かばんさんは、君にジャパリまんをたくさんくれるかいー?」

サーバル「……うん。すっごく」

フェネック「君は不幸じゃないんだねー」

サーバル「……」

フェネック「聞いてるのかいー?」

サーバル「うん」

フェネック「じゃあ、答えてよー」

サーバル「わたし、わかんないや」

フェネック「自分が不幸かどうか、わからないのかいー?」

サーバル「うん」

フェネック「わたしとおなじだねー。君はどこに寝てるの?」

サーバル「草むらとか」

フェネック「他のフレンズも一緒かいー?」

サーバル「うん」

フェネック「柔らかい草の上でー?」

サーバル「うん」

 

 

フェネック「もう、行っていいよー」

サーバル「かばんちゃんに何て言う?」

フェネック「そうだなー、私たちに会ったって言っておいてよー。だって君は私たちに会ったからねー」

サーバル「うん……分かった」

 

サーバル、走り去る。

 

光がいきなり弱くなり、一瞬にして夜になる。月がのぼり、世界を銀色に照らす。

 

フェネック「やっとだよー」

 

アライさん、片手に靴を両方持って、フェネックに近づき、それを置くと腰を伸ばして月を眺める。

 

フェネック「どうしたんだい?アライさーん?」

アライさん「フェネックと同じなのだ。月の光を見ているのだ」

フェネック「わたしが見てるのはアライさんの靴だよー」

アライさん「ここに残しておくのだ。誰かアライさんと同じように……とにかく、アライさんより足が小さいフレンズが来たら、きっと喜ぶのだ」

フェネック「だって、靴なしじゃ歩けないよー」

アライさん「"ボス"は歩いたのだ」

フェネック「"ボス"?アライさーん、そりゃないよー。いくらなんでも、自分と"ボス"を一緒にするなんてさー」

アライさん「アライさんはずっと、アライさんと"ボス"を一緒にしてきたのだ!」

フェネック「だってあれは、もっと暑いちほーの話じゃないかー」

アライさん「そうなのだ。それに、"ボス"は結局、海に沈んでしまったのだ」

 

沈黙。

 

フェネック「もう、ここにいても仕方がないんじゃないかなー」

アライさん「他だってダメなのだ」

フェネック「アライさーん。そんなこと言うもんじゃないよー。明日になれば、きっと何もかも上手くいくよー」

アライさん「どうしてなのだ?」

フェネック「さっき、あの子が言ったのを聞いてなかったのかいー?」

アライさん「聞いてなかったのだ」

フェネック「かばんさんは明日は必ず来るっていってたじゃないかー」

アライさん「じゃあ、ここで待ってればいいのだ」

フェネック「それはダメだよー。夜露をしのがなくちゃー。さあ、行こう?アライさーん」

 

アライさん、フェネックに腕を引かれ最初は従うがやがて逆らい、立ち止まる。

アライさん、木を眺める。

 

アライさん「綱一本ないのが残念なのだ」

フェネック「行こう。寒くなってきたよー」

アライさん「明日は綱を持ってくることを、思い出させてほしいのだ」

フェネック「はいよー。さあ」

アライさん「フェネックとずっと一緒にいるようになってから、どれくらいになるのだ?」

フェネック「うーん、どれくらいになるだろうねー」

アライさん「アライさんがじゃんぐるちほーの川へ落ちた時のこと覚えてるか?」

フェネック「ぶどうを摘んでいたんだってねー」

アライさん「そしてフェネックに釣り上げられたのだ」

フェネック「全部、過ぎたことだよー」

アライさん「アライさんの毛皮が、日の光で乾いたのだ」

フェネック「もう考えるのやめなよー。さあ、行こう?」

アライさん「ちょっと待つのだ」

フェネック「寒いじゃないかー」

アライさん「ときどき思うのだ。アライさんとフェネックは、お互い別々に、一人でいたほうがよかったんじゃないかって。もともと、同じ道を歩くようには、できていなかったのだ」

フェネック「どうかなー。それはわからないよー」

アライさん「分からないといえば、何だって分からないのだ」

フェネック「その方がいいっていうなら、いつだって別れられるんだよー」

アライさん「今じゃもう、無駄なのだ」

 

沈黙。

 

フェネック「そうだねー。今じゃもう、無駄だねー」

 

沈黙。

 

アライさん「それじゃあ、行くのだ」

フェネック「うん。行こう」

 

二人は、動かない。

 

 

【第一部 完】

 

 

 

かばんさんを待ちながら⑥

初回&前回記事はこちら↓

 

hyohyosya.hatenablog.com

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かばんさんを待ちながら⑥

 

フェネックはフルルのリボンを持ち、眺める

 

プリンセス「こっちに渡して!」

 

プリンセスはフェネックの手からリボンをひったくり、地面に投げつけ、その上に飛び乗る。

 

プリンセス「こうしてしまえば、もう考えたりしないでしょう!」

フェネック「でも方角が分からなくならないかいー?」

プリンセス「方角はわたしが教えるわ」

 

プリンセス、フルルを蹴る

 

プリンセス「立ちなさい!キチガイペンギン!」

アライさん「死んだかもしれないのだ」

フェネック「殺す気なのかいー?」

プリンセス「立ちなさい!ろくでなし!……ごめんなさい、ちょっと手を貸してくれないかしら?」

フェネック「でも、どうすればいいんだいー?」

プリンセス「引っ張り上げるの」

 

アライさんとフェネックがフルルを立たせ、ちょっと支えているが、やがて放す。フルル、再び倒れる。

 

アライさん「わざとやってるのだ」

プリンセス「支えてなければいけないわ……さあ、引っ張り上げて!」

アライさん「アライさんはもうごめんなのだ」

フェネック「まあまあ、もう一度やってみようよー」

アライさん「アライさんたちの仕事じゃないのだー」

フェネック「まあいいじゃないかー」

 

二人はフルルを起こし、支える。

 

プリンセス「放さないで!」

 

アライさんとフェネック、ふらふらする。

 

プリンセス「ふらふらしないで!」

 

プリンセス、フルルが落としていたラッキービーストを拾い、フルルの方に持って来る。

 

プリンセス「しっかり押さえて!」

 

フルルにラッキービーストを持たせるが、すぐに放してしまう。

 

プリンセス「放しちゃだめ!」

 

プリンセス、また始める。ラッキービーストとの接触で、フルルは少しずつ気を取り戻し、ついにはその指が、ラッキービーストをつかむ。

 

プリンセス「よし!放してもいいわ!」

 

アライさんとフェネックがフルルから離れる。

フルルは倒れかかり、よろめき、からだを折るが、ラッキービーストを手にしたまま、どうにか立っている。

プリンセス、一歩下がり、鞭を鳴らす。

 

プリンセス「前進!」

 

横で踊っていたコウテイ、前に出る。

 

フルル「ふるるー」

 

プリンセス「後退!」

 

コウテイ、後ろに下がる。

 

フルル「ふるるー」

 

プリンセス「回れ右!」

 

コウテイ、回る。

 

フルル「ふるるー」

 

プリンセス「これでいいわ。もう歩けるでしょう。二人ともありがとう。ではこれで」

 

プリンセス、ポケットを探る。

 

プリンセス「二人とも元気でね」

 

プリンセス、ポケットを探る。

 

プリンセス「元気で……」

 

プリンセス、ポケットを探る。

 

プリンセス「あれ、時計をどこにやったかしら……なんてこと!秒針のついた……ねえ、あなたたち、本物の時計よ!昔、友達のフレンズにもらったの!……落ちたのかもしれないわ……」

 

プリンセス、地面をさがす。

アライさんもフェネックもそれにならう。

プリンセス、足で、落ちているフルルのリボンをひっくり返してみる。

 

プリンセス「冗談じゃないわ!」

フェネック「別の場所に入れてるんじゃないー?」

プリンセス「なるほど」

 

プリンセス、体を折って頭を腹に近づけ、聞く。

 

プリンセス「何も聞こえないわ!ねえ、ちょっと聞いてみてくれない?」

 

アライさんとフェネック、プリンセスの腹に耳をあてる。

 

プリンセス「ねえ?どう?二人とも、チクタクが聞こえないかしら?」

フェネック「ちょっと黙っててよー」

 

三匹とも、からだを曲げて、聞く。

 

アライさん「なんか聞こえるのだ」

プリンセス「どこ?」

フェネック「それは心臓だよー」

プリンセス「なによそれ!」

フェネック「黙って!」

 

三人、聞く。

 

アライさん「止まっちゃったんじゃないか?」

 

三人とも、からだを伸ばす。

 

プリンセス「何か臭うわね。二人うち、どっちが臭いのかしら」

アライさん「フェネックは口が、アライさんは足が少し臭いのだ」

プリンセス「では、おいとまするわ」

アライさん「時計はいいのか?」

プリンセス「楽屋にでも置いてきたんだわ、きっと」

アライさん「そうか。じゃあ、さよならなのだ」

プリンセス「さようなら」

フェネック「さようならー」

アライさん「さよならなのだ」

 

沈黙、誰も動かない。

 

プリンセス「そして、ありがとう」

フェネック「こちらこそありがとうー」

プリンセス「いえ、とんでもないわ」

アライさん「いや、本当なのだ」

プリンセス「いやいや、どうして」

フェネック「本当だよー」

アライさん「とんでもないのだー」

 

沈黙。

 

プリンセス「どうも……立ち去りにくいわね……」

アライさん「これが世の中なのだ」

 

プリンセスは身体をかえして、フルルとコウテイから遠ざかり、綱をのばしながら少しずつ離れていく。

 

フェネック「方向が違うよー」

プリンセス「はずみがいるのよ」

 

プリンセス、綱がいっぱいに伸びきったところで止まると、振り返って叫ぶ。

 

プリンセス「少し離れて!コウテイ、前進!」

 

コウテイ、フルル、動かない。

 

アライさん「前進!」

フェネック「前進!」

 

プリンセス、鞭を鳴らす。コウテイはゆらめく。

 

プリンセス「もっと速く!もっと速く!もっと速く!……」

 

コウテイとフルルが進む。プリンセス、コウテイとフルルの後に続いてさっきと逆方向に進み、去っていく。

アライさんとフェネックは手を振る。

プリンセス、立ち止まり振り返る。

綱がピンと張り、コウテイが転ぶ。

 

プリンセス「腰掛け!」

 

フェネックが椅子を取りに行き、プリンセスに渡す。それをプリンセスはコウテイの方に投げる。

 

プリンセス「さようなら!」

アライさん「さよならなのだー」

フェネック「さようならー」

プリンセス「立ちなさい!ドスケベペンギン!前進!さようなら!もっと速く!ドスケベ!ほら!さようなら!……」

 

コウテイ、フルル、プリンセス、去っていく。

沈黙。

 

フェネック「おかげで時間が経ったねー」

アライさん「そうでなくたって時間は経つのだ」

フェネック「うん。でも、もっとゆっくりだったろうよー」

 

間。

 

アライさん「今度は何をするのだ?」

フェネック「分からないよー」

アライさん「もう行くのだ」

フェネック「だめだよー」

アライさん「なぜなのだ?」

フェネック「かばんさんを待つのさー」

アライさん「ああ、そうだったのだ」

 

間。

 

フェネック「さっきのフレンズたち、ずいぶん変わったねー」

アライさん「誰が?」

フェネック「今の三匹だよー」

アライさん「そうなのだ。少しおしゃべりするのだ」

フェネック「変わっただろー?ずいぶん。あの三匹はさー」

アライさん「そうかもしれないのだ。変われないのはアライさんたちだけのだ」

フェネック「かもしれない?確かだよ、これは。アライさんもよく見ただろうー?」

アライさん「見たのだ。でも、アライさんはあのフレンズのこと知らないのだ」

フェネック「そんなことないよー。知ってるじゃないかー」

アライさん「嘘なのだ」

フェネック「知ってるって言ってるじゃないかー。アライさんは何でもすぐ忘れてしまうねー。もっとも、あれが同じフレンズじゃないとしたら別だけどさー」

アライさん「その証拠に、むこうもこっちが分からなかったのだ」

フェネック「それだけじゃ何とも言えないよー。わたしの方だって、むこうが分からないようなふりをしたしさー。それに、わたしたちのことは誰にも分からないよー」

アライさん「もういいのだ!問題はーーあいたっ!いたたたたた!痛いのだーー!」

フェネック「同じフレンズじゃないとしたら別だけどさー(身じろぎもせず)」

アライさん「フェネックー、今度はこっちの足が痛いのだーー」

 

アライさん、足を引きずりながら最初に座っていた方へ行く。

そこで、少し離れた草むらの中から声がする。

 

フレンズの声「あの!」

 

【つづく】