帰ってきた読書放談(最終回:読書大喜利②~幅跳びと太陽とピアノ~)
(前回のお題、「走り幅跳びのような本」について)
あかひね(以下:あ) 走り幅跳びの特徴といえばですね、走ってきて踏み切って、一番最高点に到達した後に着地すると、いうわけですね。これは人類の文化の歴史と重なる部分があるわけですよ。最初、草創期があり、過渡期があり、全盛の時代に入っていき徐々に下降していって砂に埋もれると
かみしの(以下:か) なるほどなるほど
あ これは塩野七生先生の『ローマ人の物語』をだしたいと思います。帝政始まって五賢帝のところらへんまで読んだんですよ。だから今は走り幅跳びの一番高いところなんですよ。パクス・ロマーナの最高潮のところで、ここからだめになっていく(笑)踏み切りのね、タイミングがね、カエサルがルビコン川をわたるところなんですよね。そこで踏み切って、オクタヴィアヌスが来て、ぐちゃぐちゃした皇帝の時代がきーの、五賢帝がきーのでここから下降していきます。キリスト教がはびこり
か 破滅していく
あ 最後には砂に入る、埋もれていくという
か うまいね、あの一連の動作を歴史に見立てたと。じゃあね、安岡章太郎の『ガラスの靴』っていうのがあって。第一イメージとして思い浮かぶのが、スポーツはさわやかな感じがあって
あ なるほどね、イメージからくるパターンね
か そうそう。文学って重苦しいイメージがあるけど、安岡章太郎の『ガラスの靴』はさわやかな印象があって、まず。第三の新人の一角で、結構身近なことを描いた短編が上手な人たちなんだけど、こじんまりとしたところも、走り幅跳びってトラックとかにくらべてこじんまりとしてるじゃない
あ そうですね、一瞬で終わりますしね
か だし、競技場の中でも端っこの方でやってる。ということでこじんまりとしつつ、」さわやかな『ガラスの靴』。これはタイトル通りシンデレラを下敷きにしていて、まあひと夏の恋の思い出みたいな。午前零時までのストーリーというか。短い作品なんだけど、村上春樹が影響を受けてたりして、空虚な感じで抒情もあり、という。『第三の新人名作選』とかにも載ってるし、第三の新人全体が走り幅跳びっぽいんだけど、まあ特に代表ということで
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あ さくさくすすんでいいですね、今度は込み入った感じにしましょうか
か うーん、「色鉛筆の中でも紫色で書かれた太陽のような小説」
あ 紫の色鉛筆で書かれた太陽のような小説
か そうです
あ はぁー……なんだろうなあ。いや、でもある気がする。なんかある気がする。イマジネーションはすごくわくんですよ。絶対読んでるはずだ
か なんだろうなあ。イメージとしては『白夜行』のイメージなんだよ
あ うろ覚えのやつですけど一個出てきました。あってるかどうかもわからないですけど。小学校時代に読んだ本で『選ばなかった冒険』っていう本があるんですよ
か ほう
あ これってどんな本かっていうと、毎日寝るたびに夢の中で冒険をするんですね、そこでは怪獣みたいなやつが出てきて、死ぬと夢の世界の記憶がなくなるんですよ。同じような夢をクラスのやつらもみてるんですけど、だんだん記憶を失っていくんですね。主人公以外の人間がどんどん夢を見なくなっていく、みたいな。なんかそんな感じだった気がする。それが紫の太陽っぽいんですよね。全体的に夢の中の世界が夜なんですよ、暗いんです。で、こじつけるならば色鉛筆なので消しゴムで消えるんですね、つまり覚めちゃう、消えると覚えてない。あってるのかなこのストーリー
か まあ、作ったら作ったでいい(笑)
あ たぶんこんな話だったと思うんだよなあ(検索して)あ、岡田淳だ。童話作家ですよね
か 岡田淳……『二分間の冒険』の人だっけ
あ そうですね、あと『こそあどの森』シリーズだった気がする。『星モグラ』もよくて、空を飛びたいモグラの話なんですけど。『選ばなかった冒険』の説明がある
か (あらすじを読んで)なんか、ラノベみたいな
あ でも空気が陰鬱なんですよ。表紙も
か 『幻影城』みたいな(笑)陰鬱な感じあるよね、紫色の太陽。なんだろうな、いろいろ悩むけど、『リア王』とかかな。シェークスピア
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あ ほう
か まず紫の太陽ってなんか舞台装置みたいな、照明のようなというところがありどこか作り物感がある。なので演劇。で、悲劇だし、ずーっと暗い感じだし、いいことひとつもないし(笑)特に『オセロー』『マクベス』『ハムレット』と比べて『リア王』が個人的に一番救いがないなと思ったので、より陰鬱な気持ちになるということで
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あ 『リア王』
か ほんとはね、もーっといろいろあるはずなんだけどね、思い浮かばない、ぱっと。瀬戸内寂聴ことぱーぷるが書いたケータイ小説でもよかったんだけど(笑)
あ なんすかそれ(笑)さすがエロ作家
か 抽象的になればなるほど難しいね
あ 次は明るい感じのお題でいきましょう
か 明るく、複雑な
あ 「親友の妹のピアノの発表会のような本」
か (笑)それは……
あ 幼馴染なんですけど、兄貴の方とは親友なんです。妹は、まあ、エロゲで惚れてくるやつです
か うーん……、なんだろう
あ イメージは思いうかぶんだよなあ
か イメージはわかる、イメージは……はい
あ はい
か 小説じゃないんだけど、穂村弘の『手紙魔まみ、夏のお引越し(ウサギ連れ)』っていう歌集
あ 歌集!歌集だされたら、なんとでも言えそうな気がする。どうします、どうプレゼンします
か ギャップ萌えだと思うんですよ僕は
あ ほう!なるほど
か 親友の家によくいっていて、お兄ちゃんもいるしアットホームだし、わりと騒がしいというか抜けてるというかお茶目なところがあるというか、そんな日常生活を送ってるんだよね。ちょっと冗談とか言い合いながら。そんな人が舞台に立つと、いままで見なかった一面が見えることがあると思う。親友の妹だからこそ普段を見ているし、でもその分ギャップもあるということで
あ はぁーなるほど
か で、穂村弘はエッセイとか見るとけっこうなダメ人間というか抜けてるような、寝ながら菓子パン食べてるような人なんだけど、短歌になるとこんなクリスタルのような歌がでてくるのかと。ピアノということで音楽性もあり、胸を打つというか、楽しくなれるようなものから切なくなるものまでよめてしまう。そんなところがあるのではないかと、いう観点で
あ そうかあ。うまい感じでやられちゃったなあ。んーっとねえ、ギャップ……。いや、ちょっと違うかなあ
か 思い浮かんだものをどうこじつけるかという
あ じゃあいきましょうかね。ポイントは母性、父性でもいいです。自分より劣ったものを保護したいと思う気持ち
か 庇護欲のようなもの
あ もう一つがギャップですね。宮部みゆきの異色作『ステップファーザー・ステップ』という
か あー、ハガレンの作者が表紙書いてた
あ ミステリーなんですけど、ある男が双子の男の子の継父になっちゃう話なんですよね。まずこれが父性というか母性というか、他人なんだけど庇護してあげたい気持ちになる。もう一つがギャップですね。なんていうのかな、子供が大人ぶってるんですよ
か 背伸びしてる感じなんだね
あ そこに関するギャップ。背伸びしてるんだけども、やっぱり子供だっていう。二重にギャップがあるんですよね。子供のくせに大人びているけど、やっぱり弱い。さみしい。もう一つが児童書に宮部みゆきが書いてるという(笑)
か 外側のね
あ 一個メタな視線でのギャップです。ていうところ、親友の妹のピアノの発表会みたいな作品じゃないかと
か けっこういい感じにまとまってるね、今回
以上が第二回のあかひね、かみしのの読書放談でした。
HUBからかみしのの家に移動し、お酒を飲みつつぐだぐだとしゃべる。
これがまた最良なのでした。
前回のもの
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